兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年4月15日(2003号) ピックアップニュース

税経部より 令和3年分確定申告を終えて
税務講師団  中村  明 税理士

 本年度はオミクロン株の流行により、全国の1日の感染者数が10万人を超える日が続くなど、新型コロナウイルスが急速に感染拡大するもとで確定申告期を迎えました。通常の業務体制の維持が困難な場合、昨年と違い一律4月15日の申告・納付期限延長でなく、「コロナ感染の影響で⋯」と簡易な表示で1カ月延長の措置が取られました。
e-Tax(電子申告)にトラブル発生
 国税庁はスマート申告をうたい、電子申告、自書申告を推進し税務署への来署者を減らす対策を推進してきました。これらに対応できない年金受給者等高齢者は申告難民の状況に置かれ、多くの人が外部の相談会場に押し寄せています。e-Tax・スマホによる確定申告の定着はまだまだです。さらに今年は、申告最終日の前日からe-Taxに障害が発生し混乱に拍車を掛けたようです。税理士の代理送信も受付できない状態が起こりました。
マイナンバー記載なしOK、押印廃止
 申告書にマイナンバーの記載項目がありますが、記載されなくても税務署は受け付けています。所得税申告書以外の申告書もこれまで義務づけられてきた押印がなくなりました。
基礎控除の10万円増額
 令和3年分の確定申告は、昨年度からの改正事項ですが、
 (1)給与所得控除額が一律10万円引き下げられました。これは、基礎控除額の10万円引き上げとセットです。
 (2)公的年金控除額が一律10万円引き下げられました。さらに公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額に応じて20万円または30万円引き下げとなりました。従前から65歳未満と65歳以上に区別し、公的年金等の収入金額に応じた公的年金等控除額でしたが、令和2年分からさらに、公的年金以外の合計所得金額により公的年金控除額を計算するという、複雑な処理が必要になりました。
 (3)基礎控除額が10万円引き上げられました。合計所得2500万円を超えると基礎控除は0円です。今後基礎控除の取り扱いが焦点になりそうです。
適用できる控除を確認、身近な税理士に聞き節税を
 申告書に「所得から差し引かれる金額」とあるのが、所得控除の項目です。
 (1)社会保険料控除-生計を一にする親族の年金・健康保険料を負担した場合も控除できます。
 (2)小規模企業共済等掛金控除-個人事業者向けの制度だけでしたが、iDeCo(イデコ)の掛け金なども対象になります。
 (3)生命保険料控除-一般生命、個人年金、介護医療などの種類があります。
 (4)寡婦、ひとり親控除-法的な結婚という手続きを経ずに子どもを育てている納税者も制度利用が可能になりました。
 (5)配偶者・扶養控除-所得基準が設けられ、制度が複雑・細分化されていますので、控除金額に注意が必要です。
ふるさと納税は寄付金控除
 (6)寄付金控除-対象となる寄付の相手先は、政党のほか、国や地方公共団体、特定公益増進法人です。証明書等確認書類が必要です。ふるさと納税をした地方の役所の領収書をもとに寄付金控除で計算し、地方税の減税額が大きいのが特徴です。
 (7)医療費控除-自費診療や、旅費交通費等に加え、協会けんぽ「医療費のお知らせ」、10月~12月に受診の領収書など1年分を合計し所定の計算で控除を算出してください。領収書の添付は不要です。
 以上、控除のポイントについて説明しました。これらの控除は5年間遡って更正の請求書などで計上漏れ等の是正ができます。
今年の確定申告期の特徴等について
 新型コロナウイルスの影響、緊急事態宣言等により、私の関与先の飲食業では時短協力金等々収入が潤った店も見受けられました。全般的には事業収入は落ち込んでおり、昨年10月~今年3月の間で一月でも売上半減(30%減でも)で事業復活支援金制度の支援金が出ます。多数の事業者が申請すると予想されています。保険診療収入が減少した医療機関も可能です。従前から措置法26条を適用した方が有利な医療機関でも、令和3年分の申告は必要経費を実額計算した方が有利になる場合が多くありました。今後は記帳に基づく所得計算の算出が必要になります。
新型コロナワクチン接種2年後の消費税課税に注意
 新型コロナワクチン接種の費用は、その他のワクチンと同じく消費税課税売上となります。これまで消費税の申告をしていなかった医療機関も、ワクチン接種費用を含めて昨年の課税売上が1000万円超となった場合、2年後の2023年(1~6月の課税売上が1000万円を超えた場合は2022年)に消費税の申告が必要となります。ご留意ください。
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