2022年4月15日(2003号) ピックアップニュース
2022改定インタビュー 歯科
歯科診療所は実質マイナス
伊丹市・歯科 多田 和彦先生
--今次改定では歯科本体改定率は前回や前々回を下回る0.29%でした。
厳しい内容です。歯科は、長年にわたる低い診療報酬、患者負担増や消費税増税など家計の苦しさからの受診抑制の影響を受けていましたが、新型コロナ禍での感染対策経費の増加や、さらなる受診控えのなかで、歯科医療機関経営が悪化しています。こんな改定では歯科医療の改善につながりません。
とりわけ、金パラ価格の高騰、今次のロシアによるウクライナ侵攻の影響で最高で税込み13万円まで跳ね上がり、「逆ザヤ」になっていますが、患者さんのためにと、歯科医院が赤字をかぶって治療を続ける、非常に苦しい事態です。
--歯科用金属価格の随時改定が見直され、変動幅にかかわらず年4回の改定、素材価格の参照期間が改定実施の2カ月前となりましたが。
改善とは思えないのが現場の実感です。国は、「逆ザヤ」の状態を異常だと認識して改善してほしいです。治療にかかった材料費と同額をきちんと償還するよう改善すべきです。
--初・再診料が3点引き上げられる一方、「歯初診」の施設基準の研修項目が追加されました。
基本診療料の大幅引き上げとはかけ離れています。コロナ禍のなかで歯科治療での新型コロナ感染、クラスターが発生しなかったのは、標準予防策に基づく感染予防を徹底してきたからです。そのことを評価していた歯科外来等感染症対策実施加算(外コ)の5点を昨年10月に廃止して改定でもわずかプラス3点というのは、歯科にとっては実質マイナス改定です。月1回10点のP基処も廃止されたことも含めて引き上げとは言えません。
2022改定インタビュー 歯科
対象患者拡大など一部改善も
伊丹市・歯科 多田 和彦先生
--「歯初診」の施設基準の院内感染対策の研修項目に、標準予防策および新興感染症への対応が追加されました。
感染症対策は医療法でも義務付けられており、当然コロナ禍のなかで知識をアップデートしながら対策を講じて診療しているわけですから、研修をわざわざ施設基準で縛る必要はないと感じます。歯初診の施設基準自体廃止すべきであり、院内感染防止対策を正当に評価し、外コの5点復活や、基本診療料を大幅に引き上げることを国に求めたいです。
--先生も厚労省要請へ参加されましたが、協会・保団連が積み重ねてきた要請運動の成果などの特徴についてお聞かせください。
フッ化物歯面塗布処置(F局)は、対象が在宅等療養患者に限られていましたが、65歳以上の外来患者に拡大されたのは、改善だと思います。また、CAD/CAMインレーが新設されメタルフリーの選択肢が広がりましたが、強度や安定性については疑問が残ります。
歯科疾患管理料の総合医療管理加算の施設基準が廃止され、要件を満たせば、すべての歯科医療機関での算定が可能となりました。これにより、歯科から医科への情報提供がしやすくなり、医科歯科連携が深まることが期待できます。
歯周病安定期治療(SPT)については、SPTⅠとⅡが統合され、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)について、包括されていたP検査とP画像が出来高になったことは、患者さんにとって分かりやすくなりましたが、か強診加算の点数が新設され、一物二価は残されました。同じ治療行為でも、か強診届出医療機関を受診するのかどうかで窓口負担が変わることは患者さんも理解できないでしょう。
--75歳以上の窓口負担が1割から2割へ倍増すると、歯科治療の受診抑制が心配です。
根管治療など技術料が低すぎる問題、同一初診1回限りや処置の麻酔薬剤が算定できない不合理、歯科衛生士や歯科技工士などの評価をあげることなど、課題は山積しています。現場からもっと声を上げて診療報酬引き上げと患者窓口負担の軽減の両方をしっかり国に訴えていく必要があると思います。