2022年6月15日(2008号) ピックアップニュース
特集 2022年参議院選挙 政策解説
「骨太の方針2022」 医療費抑制政策をさらに加速させる岸田自公政権
協会政策部
7月10日投開票が予定されている参議院選挙。コロナ禍から教訓を得て、日本の医療・社会保障を充実させる政治への転換が求められている。今回は、この間の政府が公表した文書から、今後どのような医療政策が計画されているのかを解説する。
6月7日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(以下、「骨太の方針」)を閣議決定した。また、5月25日には財務省の財政制度等審議会が「歴史の転換点における財政運営」(以下、財政審「建議」)を公表した。
これらの文書から明らかになったのは、医療費抑制政策の継続である。
財政審「建議」では、かかりつけ医について「かかりつけ医機能の要件を法制上明確化すべきである。その上で、これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定するなどの制度を設けること、こうしたかかりつけ医に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを、段階を踏んで検討していくべきである」「認定を受けたかかりつけ医による診療について定額の報酬も活用して評価していく一方で、登録をしておらず医療機関側に必要な情報がないにもかかわらずあえてこうしたかかりつけ医に受診する患者にはその全部または一部について定額負担を求めることを、かかりつけ医の制度化に併せて検討していくべきである」としており、あくまで患者による「希望」としつつも、かかりつけ医の登録制、包括払い化、他医療機関受診時の経済的ペナルティーの導入まで検討されている。背景には、患者の複数医療機関受診や病院受診を抑制し、医療費を抑制する政府の意図がある。
6月7日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(以下、「骨太の方針」)を閣議決定した。また、5月25日には財務省の財政制度等審議会が「歴史の転換点における財政運営」(以下、財政審「建議」)を公表した。
これらの文書から明らかになったのは、医療費抑制政策の継続である。
医療費の総枠抑制
「骨太の方針」では「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」とされており、社会保障費の自然増を高齢化による増加分までしか認めないという方針を継続することが確認されている。財政審「建議」では、「保健医療支出の伸びが経済成長率と乖離しないことを一つのメルクマールとしていく」とされており、医療費の伸びを経済成長率に合わせるとの提案がなされていることから、今後、これまで以上に医療費の抑制が行われる可能性がある。高齢者の保険料大幅引き上げ
「骨太の方針」では「後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額の引上げを含む保険料負担の在り方等各種保険制度における負担能力に応じた負担の在り方等の総合的な検討を進める」と盛り込まれた。この点について、財政審「建議」は「介護保険制度も参考としつつ、高齢化に伴う人口構成の変化をより反映させることを通じて、後期高齢者医療制度における高齢者の保険料による負担割合を高めていく」としている。現在、後期高齢者医療制度の財源における保険料の割合は11.72%であるが、介護保険料における65歳以上の保険料割合は23%であり、同様の負担割合となれば、保険料の大幅な引き上げが不可避となる。かかりつけ医の制度化と病床削減
「骨太の方針」では、医療提供体制について「機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めることとし、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」「都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進する」としている。財政審「建議」では、かかりつけ医について「かかりつけ医機能の要件を法制上明確化すべきである。その上で、これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定するなどの制度を設けること、こうしたかかりつけ医に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを、段階を踏んで検討していくべきである」「認定を受けたかかりつけ医による診療について定額の報酬も活用して評価していく一方で、登録をしておらず医療機関側に必要な情報がないにもかかわらずあえてこうしたかかりつけ医に受診する患者にはその全部または一部について定額負担を求めることを、かかりつけ医の制度化に併せて検討していくべきである」としており、あくまで患者による「希望」としつつも、かかりつけ医の登録制、包括払い化、他医療機関受診時の経済的ペナルティーの導入まで検討されている。背景には、患者の複数医療機関受診や病院受診を抑制し、医療費を抑制する政府の意図がある。