2022年6月25日(2009号) ピックアップニュース
燭心
政府の2022年「骨太の方針」で、「国民皆歯科健診」が検討されているという。歯科健診の制度拡充は歯科界が長年要望してきたことである。高校を卒業すると歯科健診は任意であり、企業内の健診でも歯科が入っているところは少ない。すべての国民が、きちんと定期的な歯科健診を受けられるようになれば、糖尿病などの予防にもつながるだろう▼とは言え、手放しで喜ぶのは禁物だ。「骨太の方針」全体を見渡すと、相変わらず医療費抑制、社会保障削減の方針が貫かれている。今秋からは75歳以上の窓口負担の2倍化も計画されている。軍備増強やマイナンバーカードの保険証化と同じ文脈で書かれても、違和感が先立ってしまう。予算が確保されるのか、危惧する声も強い▼歯科医療に関する国の予算は、長年にわたって増額されないままである。国民医療費に占める歯科医療費の割合はわずか7%にまで低下してしまった。低歯科医療費政策のしわ寄せを一番受けているのは歯科技工士で、低賃金・長時間労働のせいで、若い人たちの離職率が極めて高い。このままでは、10年後の歯科医療を支える人材がいなくなってしまう▼国民の半数は、気になるところがあるにもかかわらず、歯医者に行っていないという。その最大の理由が「お金が心配」なのだそうだ。たとえ「皆健診」が実現したとしても、治療が受けられなければ意味がない。暮らしを支える社会保障の拡充が必要だ。骨太な体も、歯の健康があってのことである(星)