2022年7月25日(2012号) ピックアップニュース
政策研究会 神奈川県立保健福祉大学 兪炳匡教授が講演
医療充実の「プランB」で日本再生を
衰える日本の国際競争力
兪氏は医学部を卒業し、臨床研修後、アメリカのハーバード大学やジョンズ・ホプキンス大学で医療経済学を修め、スタンフォード大学医療政策センター研究員や米国疾病管理予防センター(CDC)エコノミストなどとして働いた経験を持つ。兪氏は、日本経済の現状として、東証の上場外国企業数が市場開設の1973年と同水準まで減り、外国企業が全面的に日本市場から撤退していること、世界経済フォーラムの男女平等ランキングで120位であること、ハイテク分野の大学ランキングで最高が東大の134位にとどまること、世界の時価総額上位企業に占める日本企業の割合が急速に減少していること、アジア先進5カ国の国際競争力ランキングでも最下位に転落していることなどから、日本の国際競争力が衰えているとした。
このような状況では、企業の利益の最大化をめざす「プランA」で、世界で勝ち抜くことは困難であり、「プランB」が必要であると訴えた。
医療など非営利部門が重要に
兪氏の提唱する「プランB」は、「勝ちを増やすのではなく負けを減らす」を目的に、営利企業ではなく、政府・民間「非」営利組織を中心とするもの。地域経済で、営利部門が上げた利益は主に東京に本社がある大企業に還元されるが、非営利部門では、多くが地域内へ還元・循環するので、非営利部門を増やすことで、地域からの富の流出を減らせるとした。そして、医療関連分野、特に予防医療教育の経済波及効果や雇用創出効果は、他分野に比べて高く、非営利組織である医療機関は、「プランB」の重要な担い手であると強調した。