2022年9月05日(2015号) ピックアップニュース
FAX・オンライン署名にご協力を
オンライン資格確認 義務化は撤回を
中医協 4月からの義務化を答申
10月からは「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」として、オンライン資格確認を行う体制のある医療機関で、初診時にオンライン資格確認を行った場合は2点、それ以外(保険証)で資格確認を行った場合は4点の加算を設ける案が出されるなど、患者へも「マイナンバーカードで窓口負担を抑えられる」と利用を促す方針。
しかし、協会の調査によると、「オンライン資格確認の導入義務化と保険証の原則廃止」に、会員の7割が反対している(図1、調査結果の詳細は下記)。また、マイナンバーカードの普及率は約45%で、デジタル庁の調査によると「健康保険証として利用できる」ことを理由に取得する人は10%程度となっており、カードを取得しても健康保険証として利用申し込みをしない理由として「メリット・必要性を感じないから」との回答は25%超となっている。
ランニングコストの増加や新たな業務負担に懸念を示す医療機関が多く、患者側もメリットを感じていない中、4月からの「義務化」は乱暴であり現実的ではない。
「年末に状況調査」
中医協でも、答申書付帯意見として年末にもシステム導入の状況調査を行い、地域医療に支障を生じるなどやむを得ない場合の必要な対応について、期限も含め検討するとされた。協会・保団連では、4月からの「義務化」撤回を求め、会員署名に取り組む。
すでに医療機関へFAXで署名用紙を送信しているので、ぜひご返信をおねがいしたい。オンラインでの署名も可能。下のQRコードより署名いただける。ぜひご協力いただきたい。
オンライン資格確認義務化撤回を求める医師・歯科医師署名にご協力ください!
署名はFAXまたはオンラインで。FAXは8月末~9月初旬に送信しています。オンラインは右のQRコードから
資格確認義務化「反対」7割超
「オンライン資格確認とサイバーセキュリティアンケート結果」
協会が6月下旬~7月初旬に実施した、「オンライン資格確認とサイバーセキュリティに関するアンケート調査」では、オンライン資格確認の導入義務化と保険証の原則廃止への「反対」が7割超にのぼり、政府がすすめるマイナンバーカードによるオンライン資格確認義務化への不安の声が多数寄せられている。
「閉院するしかない」「情報漏洩が心配」
本調査は、政府が「骨太の方針」にマイナンバーカードの保険証利用を拡大するとともに「2023年度からオンライン資格確認義務化」「健康保険証の原則廃止」を盛り込んだことを受け、実施したもの。昨今増加する医療機関に対するサイバー攻撃と対策に関する項目も設けた。「オンライン資格確認の導入義務化と保険証の原則廃止」については「反対」が72.8%にのぼった(1面に図)。
医療機関への影響について自由記述で聞いたところ、「マイナンバーカードの紛失や個人情報の漏洩が心配」「高齢者を中心に患者の中でも混乱が生じる」「高齢者が受診困難になる」「負担が増えるため、閉院も検討」「今の保険証のままで特に不便を感じていないのに色々と新規のことが増えて面倒」など、9割を超える意見が政府の方針に否定的内容だった。
中医協総会では、患者によるマイナンバーカードの健康保険証利用が進むよう、オンライン資格確認の導入の原則義務付けを答申。義務化については「療養担当規則等」で明記すると示したが、義務化の対象となる医療機関が対応しない場合について厚労省幹部は「保険医療機関等の指定の取り消し事由になりうる」と述べており、公的保険診療が提供できなくなる可能性がある。中医協では、日医から「やむを得ぬ事情により対応できなかった医療機関が、即座に保険医療機関が取り消されるような厳格な意味であれば、地域医療現場に大混乱を来す」、日歯からも「紙レセプト以外の歯科医療機関でもシステム導入に支障が出ている。小規模な歯科医療機関については柔軟に対応してほしい」などと懸念の声が出ている。
オンライン資格確認「導入予定ない」36%
マイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入については、「導入予定はない」と回答した医療機関が35.9%と最も多く、「導入予定」が32.0%、「導入済」28.2%となった。病院をのぞくと4割近くが「導入予定はない」と回答している(図1)。導入または準備をするなかでの課題については「利用者が少ない」、「セキュリティ対策が不安」が非常に多く、特に、「導入済み」の医療機関の8割超が「利用者が少ない」と回答している(図2)。
現在、オンライン資格確認の件数は全受診の1割前後で、そのうち99%は保険証によるものであり、マイナンバーカードで受診する患者数は診療所では1週間に1人いるかどうかの水準である。このことからも患者・国民の多くはマイナンバーカードの携帯に不安を持っており、保険証の代わりに利用することを求めていないことは明らかである。医療機関では、保険証の〝目視〟による資格確認で特段の支障や不都合はなく、これまで通りの対応を続けるべきである。
セキュリティ予算「確保」2割のみ
電子カルテシステムを導入している医療機関は全体の56.0%であり(図3)、そのうち、サイバー攻撃への脅威を「感じる」との回答が64.2%にのぼった(図4)。特に被害がたびたび報じられている病院では、「感じる」が100%となった。一方、セキュリティ予算については「十分確保できていない・わからない」が76.3%、「確保できている」が23.7%となり、サイバー攻撃対策の必要性を感じるが対策が追い付いていない現状が明らかになっている。
実際、他協会の調べでは、実際にオン資の運用を開始した医療機関において、利用者が極めて少ない中でも、2割近くの医療機関から電子カルテやレセコンなどシステム回りの動作の支障はじめ、保険者によるデータ更新の遅れ・不備などトラブルが報告されている。このような不安定なシステムで、患者の健康情報を扱うことは極めて危険であるといわざるを得ない。しかも、情報漏洩等が起こった際の責任が医療機関に一方的に押し付けられる可能性も強く、そうした点からも拙速な義務化には大きな問題がある。
申請はあわてずに
医療機関への働きかけが強引に推し進められてきた5月下旬以降の進捗ペースから見ても、2023年3月末までに半数弱の医療機関等がオンライン資格確認を運用開始する状況である。医科診療所は3割弱、歯科診療所は4割未満に到達するかどうかのペースであり、実際には、新型コロナウイルス感染状況の行方、半導体市場の逼迫はじめとした機材供給不足やベンダーの対応能力なども考慮すれば、その進捗も不透明と見るのが現実的である。ましてや、来年3月末までに9割を超える診療所での導入義務化などは非現実的な設定・議論というべきである。こうした状況の中、中医協の答申付帯意見では、年末にシステム導入の状況調査を行い、地域医療に支障が生じる場合等の対応を検討するとされた。仮にカードリーダー申請を検討する場合でも、今年12月末までに申請すれば補助金の対象となるので、拙速な導入でベンダーと高額な契約を結ばないように注意することが必要である。
協会は8月27日、中医協総会でオンライン資格確認の導入の原則義務付けについて答申したことを受け、下記抗議声明を発表した。
抗議声明
答申では、義務化の具体的中身に関わって、「療養担当規則等」で明記すると示した。しかし、協会が実施したアンケートでは、病院をのぞく4割近くが「導入予定はない」と回答している。義務化の対象となる医療機関が対応しない場合について、厚労省幹部は「保険医療機関等の指定の取り消し事由になりうる」と発言している。対応できなかった医療機関が、即座に保険医療機関の指定が取り消されれば、地域で適切な医療が提供できず、憲法で保障された国民の受療権を奪うことになりかねない。
マイナンバーカードの普及に政府が躍起なのは、国民の健康情報や資産情報等を国家が一元管理して、社会保障における給付削減や負担増に用いることや個人情報を企業に提供することによるビジネスチャンス拡大、IT産業への利益供与等が目的であると考えざるを得ない。
そもそもマイナンバー制度は個人のプライバシー権等人権をないがしろにするものである。実際、類似の制度を導入しているヨーロッパ諸国でもプライバシー保護や人権擁護の観点から、様々な見直しが進められてきた経緯がある。イギリスでは、2008年から「国民ID番号カード制」を導入したものの、10年5月には「国民ID番号カード制は恒常的に国民の人権を踏みにじる制度である」として廃止された。ドイツでも、汎用の共通番号の導入は連邦憲法裁判所の判決や憲法上許されないとする議会の見解があり、行政分野共通の番号を採用していない。
こうした世界の流れに逆行するマイナンバーカードの普及のために、医療機関を動員することは国民の医療機関に対する信頼をほり崩すものであり、断じて許されない。当会は、「オンライン資格確認導入の原則義務化」と「健康保険証の原則廃止」方針の撤回を強く求める。
抗議声明
2022年8月27日
「オンライン資格確認導入の原則義務化」と「健康保険証の原則廃止」方針の撤回を求める
兵庫県保険医協会
第1157回理事会
答申では、義務化の具体的中身に関わって、「療養担当規則等」で明記すると示した。しかし、協会が実施したアンケートでは、病院をのぞく4割近くが「導入予定はない」と回答している。義務化の対象となる医療機関が対応しない場合について、厚労省幹部は「保険医療機関等の指定の取り消し事由になりうる」と発言している。対応できなかった医療機関が、即座に保険医療機関の指定が取り消されれば、地域で適切な医療が提供できず、憲法で保障された国民の受療権を奪うことになりかねない。
マイナンバーカードの普及に政府が躍起なのは、国民の健康情報や資産情報等を国家が一元管理して、社会保障における給付削減や負担増に用いることや個人情報を企業に提供することによるビジネスチャンス拡大、IT産業への利益供与等が目的であると考えざるを得ない。
そもそもマイナンバー制度は個人のプライバシー権等人権をないがしろにするものである。実際、類似の制度を導入しているヨーロッパ諸国でもプライバシー保護や人権擁護の観点から、様々な見直しが進められてきた経緯がある。イギリスでは、2008年から「国民ID番号カード制」を導入したものの、10年5月には「国民ID番号カード制は恒常的に国民の人権を踏みにじる制度である」として廃止された。ドイツでも、汎用の共通番号の導入は連邦憲法裁判所の判決や憲法上許されないとする議会の見解があり、行政分野共通の番号を採用していない。
こうした世界の流れに逆行するマイナンバーカードの普及のために、医療機関を動員することは国民の医療機関に対する信頼をほり崩すものであり、断じて許されない。当会は、「オンライン資格確認導入の原則義務化」と「健康保険証の原則廃止」方針の撤回を強く求める。
以上