2022年11月05日（2021号） ピックアップニュース
燭心
日本での福袋の人気は高い。正月には大小の福袋が店頭に並び、客が列をなす。福袋の起源は、江戸時代に三越の前身である呉服屋の越後屋が1年間の余った端切れを袋に入れて売りだした恵比寿袋だという。中身がわからなくとも、販売価格は袋内の商品合計よりも安く設定されお得感があるため射幸心が煽られるのだろう。最近では海外でも「lucky bag」や「mystery bag」の名で販売され人気を博しているらしい▼さて、こちらのミステリーバッグはどうだろう。今年5月に成立した経済安保推進法である。官民協働での先端技術の保護・育成や外国からのサイバー攻撃の防止、サプライチェーン強化等が目的とされている。しかし、「経済安全保障」そのものの定義がなく、法の根幹に関わる多くの概念を決定づける「基本方針」が政府から発表されないままでの成立であった。福袋のごとく具体的な全容が見えない法律の行使に白紙委任を与えてしまったのである▼9月になり後出しじゃんけんのように二つの基本方針案が発表された。なかでも軍事活用につながる先端的重要技術の研究開発については、罰則付き守秘義務を課し研究者を軍事研究に囲い込んでしまうおそれがある。特定秘密保護により研究者は監視下に置かれる▼まさに軍事研究推進法であり、決してラッキーバッグではないことを銘記しておく必要があるのだが、その役割を担うべき日本学術会議が軍事研究に対して緩やかな態度を見せ始めたのは気になるところだ。（九）
