2023年5月25日(2038号) ピックアップニュース
燭心
「政策習慣病」という文字を見て思わず膝を打った。群星沖縄臨床研究センター長の徳田安春氏が雑誌のコラムで使用しており、まさに言い得て妙と感じいった▼生活習慣病という言葉には自らの罪を償うために十字架を背負わされるような重さがある。生活習慣に関係する疾病が多いことに異論はないが、提唱者である日野原重明氏の思惑とは裏腹に、疾病の自己責任論を生み出し政治的に利用されてきたこともまた事実である▼糖尿病や肥満は遺伝的背景と環境要因の両方が影響する。治療に当たっては生活環境にアプローチせざるを得ないため、悪しき習慣を見つけると医療者は自動的に生活改善を要求する。しかし、自らが選択した結果としての病気とはいえ、今の日本に自分の生活環境を自由に選択できる人がどれほどいるのかを考えると、選んだ責任を個人一人に負わせ続けることは理不尽ではないか▼2000年から始まった健康日本21で策定された59目標のうち10年間で達成できたのはわずか10項目、メタボや糖尿病の合併症を減らすことはできなかった。バブル崩壊後の経済低迷にリーマンショックが加わった時期である。生活習慣は社会の影響を大きく受ける▼国民の社会的、経済的格差を是正して食生活や運動習慣を取り入れやすくする工夫は政策で行うべき部分が大きいことから、政策習慣病に変更してはと徳田氏は勧めるのだが、健康格差を生みだす貧困こそ新自由主義を選択した国の政策習慣病と言えるかもしれない(九)