2023年7月15日(2043号) ピックアップニュース
2022年 国保保険証に関する県内自治体調査
差し押さえ件数が大幅に増加
協会が毎年実施している「国保保険証交付等に関するアンケート」の結果がまとまり、県内の国保加入世帯70万4494世帯のうち保険料減免を利用している世帯が7割、滞納世帯は2割にのぼり、約1万2千世帯に保険証が未交付の状態となっていること、滞納による差し押さえ件数が7660件にのぼることなどが明らかとなった。結果の詳細を紹介する。
国による保険料軽減・免除制度を利用している世帯(21年度末時点)は、48万6637世帯と、加入世帯の約7割にのぼる。
西宮市や尼崎市など都市部では自治体による独自の保険料減額制度を実施し多数利用者がいるが、独自減免制度がない自治体が多い。
国が昨年4月から未就学児の均等割りを5割軽減する制度を導入していることを受け、自治体でさらなる軽減を実施するのかどうかを聞いたが、以前から軽減措置を行っていた加西市と赤穂市の2市町以外では、新たに実施予定はないとの回答だった。
高すぎる国保料是正のため、自治体独自の減免制度の拡充が求められる。
滞納期間が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合があり、2021年度差し押さえ件数は7660件と20年度より大きく増加した(図)。新型コロナ感染拡大・緊急事態宣言などで活動が制限されるもとで、差し押さえを行うことができなかった各市町が、例年通りの差し押さえを再開した可能性が考えられる。
滞納世帯への催促について、8市が「民間委託している」と回答(表)。各世帯の個別事情を見ず、保険料の収納率を高めることありきの対応が行われかねない。
診療報酬明細書(レセプト)点検について、民間業者に委託を行っているのは28市町と昨年と同様となった。うち19市町が「点検効果額目標」を「定めている」と回答。数字ありきで民間業者にレセプト請求金額の削減を行わせているということであり、大きな問題である。
1万世帯を超える県民が手元に保険証がなく、必要な治療を受け難い「無保険」状態となっている現状は、「国民皆保険制度」と言い難く、早急な改善が必要である。
有効期限の短い短期被保険者証の交付数(22年12月1日時点)は、3万1445世帯、4.5%となった。
医療機関窓口で全額をいったん負担しなければならない資格証明書の21年度発行世帯数は6969世帯、被保険者世帯比で1.0%となり、20年度7911世帯、1.1%から微減している。ただし、22年度になって12月までの発行数は7764世帯とすでに21年度発行世帯数を上回っている。宝塚市・丹波市・宍粟市・市川町・福崎町の5市町は資格証明書を発行していない。資格証明書は、必要な医療機関受診の抑制につながり、患者の健康悪化を招く可能性が極めて高い。
国保法44条に基づいて、災害・事業の休廃止・失業・生活困窮の場合に、医療費窓口負担が免除、減額、猶予される制度が定められているが、22年度の利用者は6自治体29世帯にとどまっている。
各市町はこれまで独自で自治体の会計から法定外繰り入れを行い保険料を引き下げてきたが、保険料収納率の向上や法定外繰り入れの削減が評価され、都道府県に交付金が傾斜配分されるようになり、繰り入れ金額は年々減少し、神戸市など8市町ではゼロとなっている。
国保は市民の助け合い制度ではなく、憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。国保の改善には、構造的問題の解決とともに、保険料引き下げのため、抜本的な国庫負担増が必要であり、同時に市町には法定外繰り入れの増額も求められる。また、保険料を負担しないという理由で、給付に制限をもうける制度は、低所得者を中心に、その受診の機会を奪いかねず、社会保障としては本末転倒であり、廃止すべきである。
資格確認書は「保険者が必要と認めるときは、本人からの申請によらず、資格確認書を交付できることとする」との法の規定があり、法成立時の参議院での附帯決議でも、全ての被保険者が確実に保険診療を受けることができるための措置を講ずること、短期証や資格証明書廃止に伴う運営では患者や医療現場の声を聞き、配慮することなどが盛り込まれた。
協会は保険証廃止撤回に取り組むとともに、各市町が全加入者へ一律に資格確認書を発行すること、滞納者でも必要な医療が受けられるよう対応することなどを求め、県社会保障推進協議会などとともに運動を強めていく。
保険料減免7割 さらに拡充を
国民健康保険は加入者の半数が60歳以上で、加入者の4割超が無職、1世帯当たりの平均所得は140万円で、平均保険料(税)調定額は約14万円と、協会けんぽや組合けんぽと比較しても、保険料負担率が高くなっている。本調査は県内の国保の保険料滞納や無保険の現状を明らかにするため、保険証の交付状況や保険料の減免制度利用世帯数、滞納者数などを質問するもので、1988年から行っており、31年連続で県下の全自治体から回答を得ている。国による保険料軽減・免除制度を利用している世帯(21年度末時点)は、48万6637世帯と、加入世帯の約7割にのぼる。
西宮市や尼崎市など都市部では自治体による独自の保険料減額制度を実施し多数利用者がいるが、独自減免制度がない自治体が多い。
国が昨年4月から未就学児の均等割りを5割軽減する制度を導入していることを受け、自治体でさらなる軽減を実施するのかどうかを聞いたが、以前から軽減措置を行っていた加西市と赤穂市の2市町以外では、新たに実施予定はないとの回答だった。
高すぎる国保料是正のため、自治体独自の減免制度の拡充が求められる。
滞納の催促・レセプト点検 多くが民間委託
保険料を滞納している世帯数(22年12月1日時点)は、12万3113世帯で、国保加入世帯の2割近くにのぼり、加入者の多くが減免制度を利用しても、保険料が高すぎて支払えない世帯が多数存在していることが分かる。滞納期間が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合があり、2021年度差し押さえ件数は7660件と20年度より大きく増加した(図)。新型コロナ感染拡大・緊急事態宣言などで活動が制限されるもとで、差し押さえを行うことができなかった各市町が、例年通りの差し押さえを再開した可能性が考えられる。
滞納世帯への催促について、8市が「民間委託している」と回答(表)。各世帯の個別事情を見ず、保険料の収納率を高めることありきの対応が行われかねない。
診療報酬明細書(レセプト)点検について、民間業者に委託を行っているのは28市町と昨年と同様となった。うち19市町が「点検効果額目標」を「定めている」と回答。数字ありきで民間業者にレセプト請求金額の削減を行わせているということであり、大きな問題である。
保険証未交付1万2千世帯 短期保険証3万1千世帯
保険証の未交付数(保険証の交付対象世帯総数から保険証交付済み数を除いた数、2022年12月1日時点、一部市町は更新時期が異なるため時期が異なる)は県全体で1万1712世帯、未交付率は1.7%となった。特に、尼崎市で7.3%、西宮市で4.3%と都市部を中心に未交付率が高い。1万世帯を超える県民が手元に保険証がなく、必要な治療を受け難い「無保険」状態となっている現状は、「国民皆保険制度」と言い難く、早急な改善が必要である。
有効期限の短い短期被保険者証の交付数(22年12月1日時点)は、3万1445世帯、4.5%となった。
医療機関窓口で全額をいったん負担しなければならない資格証明書の21年度発行世帯数は6969世帯、被保険者世帯比で1.0%となり、20年度7911世帯、1.1%から微減している。ただし、22年度になって12月までの発行数は7764世帯とすでに21年度発行世帯数を上回っている。宝塚市・丹波市・宍粟市・市川町・福崎町の5市町は資格証明書を発行していない。資格証明書は、必要な医療機関受診の抑制につながり、患者の健康悪化を招く可能性が極めて高い。
国保法44条に基づいて、災害・事業の休廃止・失業・生活困窮の場合に、医療費窓口負担が免除、減額、猶予される制度が定められているが、22年度の利用者は6自治体29世帯にとどまっている。
国庫負担の抜本的増額を
高齢者、無職・低所得者が多い国民健康保険では、保険料負担が重く、滞納者が多く、加入者が安心して医療を受けられない現状が存在する。各市町はこれまで独自で自治体の会計から法定外繰り入れを行い保険料を引き下げてきたが、保険料収納率の向上や法定外繰り入れの削減が評価され、都道府県に交付金が傾斜配分されるようになり、繰り入れ金額は年々減少し、神戸市など8市町ではゼロとなっている。
国保は市民の助け合い制度ではなく、憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。国保の改善には、構造的問題の解決とともに、保険料引き下げのため、抜本的な国庫負担増が必要であり、同時に市町には法定外繰り入れの増額も求められる。また、保険料を負担しないという理由で、給付に制限をもうける制度は、低所得者を中心に、その受診の機会を奪いかねず、社会保障としては本末転倒であり、廃止すべきである。
「資格確認書」は一律全員に発行を
「保険証廃止」法が成立したことを受け、保険証に代わって、加入者の申請に基づき「資格確認書」が交付されることとなった。短期証や資格証明書は廃止されることとなる。現在でも多くの加入世帯のもとに保険証が届いていないが、さらに多くの世帯で保険証が手元になく必要な医療が受けられないという状態が生まれかねない。資格確認書は「保険者が必要と認めるときは、本人からの申請によらず、資格確認書を交付できることとする」との法の規定があり、法成立時の参議院での附帯決議でも、全ての被保険者が確実に保険診療を受けることができるための措置を講ずること、短期証や資格証明書廃止に伴う運営では患者や医療現場の声を聞き、配慮することなどが盛り込まれた。
協会は保険証廃止撤回に取り組むとともに、各市町が全加入者へ一律に資格確認書を発行すること、滞納者でも必要な医療が受けられるよう対応することなどを求め、県社会保障推進協議会などとともに運動を強めていく。
図 コロナ感染拡大時に減少した差し押さえが再び増加
表 保険料の催促を民間委託している自治体とその内容