兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2023年7月25日(2044号) ピックアップニュース

主張 防衛費増と社会保障財源
命と健康を守り軍事大国化を許さない

 第211回国会が6月21日、閉会した。今国会で見過ごせないのは、軍備増強の財源確保のため、社会保障・医療費の削減に拍車をかけるという、現政権の態度が明らかになったことだ。防衛産業を支援する防衛生産基盤強化法案、5年間で43兆円もの防衛予算を確保する防衛財源確保法案の成立が、その布石である。
 さらに、現政権は国会開会に先立ち、緊迫するウクライナ情勢を背景に、台湾海峡危機等を煽り、国会での審議を経ず、安保3文書を改定し、「敵基地攻撃能力」の獲得に踏み切った。「敵基地攻撃能力」とは、日米軍事同盟下では、アメリカが「敵」とみなした国であれば、基地のみならず政府中枢さえ先制攻撃できる能力である。
 アメリカが近年行ってきた戦争は、対テロ・アフガン戦争、イラク戦争など、国際法違反が疑われる一方的な武力行使も含まれており、専守防衛を旨とする自衛隊を先鋒として送り出す改定など、到底許されない。
 そして、与党内では、武器輸出三原則の廃棄にとどまらず、殺傷兵器をも輸出する方針が議論されている。防衛生産基盤強化法と合わせ軍需産業への市場拡大を図るもので、「死の商人」を支援する政策として国際的な非難を免れないであろう。
 国会で成立した今年度予算は防衛予算が前年度比で26.3%増、今年度から5年間で防衛費を43兆円とする計画である。政府が医療・社会保障費を抑制する根拠としてきた財政危機など、口実に過ぎないことが明らかになった。
 すでに現政権は防衛費の増額等の財源として、4.2兆円の歳出改革を行うとして、公的医療保険や介護保険にかかる費用を抑える方針を明らかにしている。コロナ禍を経て、医療提供体制を充実させることが求められているにも関わらず、それに真っ向から反する政策は容認できない。
 命と健康を守る医師・歯科医師として、日本の軍事大国化でなく、医療・社会保障の充実をめざし、来年の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス報酬改定での抜本的な引き上げと、年内にも明らかになる介護利用者負担増計画に反対の声を上げよう。
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