2023年7月25日(2044号) ピックアップニュース
国際部が研究会 日本政府の誤った移民・入国管理政策
鳥井一平移住連共同代表理事が講演
労働組合で長年、外国人労働者のさまざまな相談に乗ってきた鳥井氏は、「日本政府の誤った移民・入国管理政策と外国人差別」をテーマに講演し、日本における移住(外国人)労働者の受け入れ政策の変遷を振り返り、その問題点を指摘した。
鳥井氏は、東京都、兵庫県、愛知県などの自治体に在留している外国人の数を国籍別に紹介しながら、地域の産業と在留外国人の国籍との関連が浮かび上がるとし、例として滋賀県甲賀市では、ブラジル人が最も多く、電気製品の会社や大規模工場があるためであると解説。国籍と在留資格を通じて、地域の産業構造が明確になるとした。
日本の外国人労働者受け入れ政策の変遷については、1989年に入管法が改定され、日系ビザの導入が始まって以降、外国人労働者の受け入れ枠が拡大されてきた。特に2009年に在留資格として「技能実習1号・2号」が創設され、2019年に「特定技能」が創設されるなど、「開発途上国」における人材育成を目的とするとされる在留期間の限られた受け入れ制度がつくられた。一方、日本には就労ビザが存在せず、職種ごとの「就労系ビザ」のみが提供されていると鳥井氏は指摘した。
そして、技能実習生の賃金が極めて低いことや、労働条件の劣悪さ、自由な退職ができず、著しい支配従属による「モノ扱いが許される」労使関係になっているという現状を紹介。他にも、医療・教育、賃金未払、解雇、労災など労働問題に限らず、さまざまな外国人差別の問題が浮き彫りになっているとし、技能実習制度は国連人権理事会などからも人身売買や奴隷労働であると繰り返し勧告と批判を受けていると紹介した。
また、単一民族国家論や外国人犯罪キャンペーンなど、事実に反するデマ・フェイクにより移民政策の議論が歪められがちであることに注意すべきであるとした。
そして、日本は移民の存在なくしては成り立たない社会となっており、その事実を直視し、言語・宗教・文化の違いを前提にした移民政策を採り、外国人労働者を管理・監視の対象ではなく、共に生き、働く仲間、地域の隣人、社会の担い手として受け入れ、誰一人として取り残されない社会の実現に向けて努力することが必要であると強く訴えた。