兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2023年8月25日(2046号) ピックアップニュース

燭心

 19年10月1日現在、45年8月15日以降の「戦後生まれ」人口は1億655万人、国民の84.5%を占める。「先の大戦」に関し教科書での取り上げ方も変わり、8月恒例の戦争関連特集番組への興味も少なくなり、戦争は他人事となりつつある。リアルと共感が失われ、次の戦前となっていく▼戦争体験には、戦闘による直接の加害と被害を有する「当事者」、直接加害していない「被害者」、直接被害を受けていない「加害者」としての立場に大別できる▼日本の先の大戦における当事者としての象徴には「靖国神社」があり、被害者としてのセレモニーには「全国戦没者追悼式」や広島・長崎の「平和祈念式典」などがあるが、加害者としてその責任と反省を示す場は見当たらない▼敗者は全員被害者になりがちで、戦勝国には加害者としての認識が極めて弱い▼前線の当事者が、加害者と被害者のどちらになるかは時の運だが、無理な戦術により餓死あるいは病死した軍人への加害者は誰なのか。当時の国民、軍人、政治家、マスコミはどちらだったのか▼今年の各政党の終戦談話の中で、他国への「加害」を示す文言を有するのは立民、共産、れいわ、社民であり、明らかな「謝罪」は社民だけだ。天皇陛下は「深い反省」と述べ、靖国参拝はしていない▼戦争は、ひとたび起これば、指導者と呼ばれる加害者の命令で、罪悪感を許されない当事者が、何の恨みもない人々を被害者にしていく。戦争は止めどもなく3者を増やす悪の所業である(空)
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