兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2023年10月25日(2052号) ピックアップニュース

薬科部会員が100人超に
医師・歯科医師・薬剤師らの交流活発に
薬科部代表世話人  長光 由紀

 兵庫協会が設立した薬科部の会員が100人を超えた。長年にわたり薬科部の活動を進めてきた長光由紀代表世話人(いたみアリオ薬局)に、これまでの薬科部の活動をふりかえって寄稿いただいた。

はじめに
 日本全国の保険医協会で薬剤師の会「薬科部」があるのは、兵庫協会だけです。このたび設立から25年、会員数100人を超えることができたのでお知らせします。
 5年毎の会員数(6月時点)の変遷は、1999年5人、2003年35人、2008年59人、2013年81人、2018年74人、2023年103人です。
薬科部黎明期
阪神・淡路大震災後の健康相談事業きっかけに
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はりま姫路総合医療センターの木下芳一院長を招いたWeb配信併用の研究会(2023年5月20日)

 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の後、各地に仮設住宅、復興住宅が建てられました。
 兵庫協会の尼崎支部では、金楽寺住宅や道意住宅など各住宅で故畠中正昭支部長(当時)を中心に健康相談事業(血圧測定、健康相談、健康体操など)を行いました。
 健康相談には尼崎支部からの呼びかけで有志の薬剤師(中村信也、故木下弘喜各氏や滝本桂子前薬科部代表世話人ら)や看護師らも協力し、そのことを通じて尼崎支部とつながりをもつようになっていました。健康相談事業でのつながりが、現在の「医療と福祉を考える会」での多職種連携にもつながっているそうです(兵庫協会「40年史」等参照)。
薬科部誕生
世話人会、研究会の開催を重ねる
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首藤達哉先生による腹診の実技も交えた第16回漢方研究会(2012年11月17日)

 1998年6月に兵庫県薬剤師会の有志役員(笠井秀一、大川恭子、赤松路子、尾村正包、徐永昌各氏)と協会の故朝井榮元理事長(当時副理事長)、森下敬司顧問(当時副理事長)、松本卓先生(当時理事)らが懇談会を開きました。
 1999年6月には協会における賛助会員(共済制度への加入はなし、など)として、毎月世話人会を開き研究会や交流会を開催するようになり、2002年2月に「薬科部」として理事会で承認されました。


薬科部活動
研究会やバスツアーなど多彩な企画を開催
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奈良県・大願寺へのバスツアー(2016年5月22日)

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薬膳研究家・安原喜千枝先生による薬膳料理教室(2013年6月2日)

 これまで、医師、歯科医師、薬剤師をはじめ医療スタッフの交流も目的とした研究会(時節にあったテーマ、漢方、フィジカルアセスメント、調剤報酬改定など)の開催を中心に、薬草園などを見学するバスツアー、製薬会社工場・医薬品卸配送センター見学会(2010年・沢井製薬三田工場、2011年・東和薬品大阪工場、2014年・メディセオ南大阪ALC)、薬膳研究会・安原喜千枝先生を講師にした薬膳料理の調理試食会(2008年、2009年、2013年、2015年、2017年の5回開催)などを開き、活動を進めてきました。
 また毎年、みなと神戸海上花火大会の鑑賞も兼ねた研究会を開き、協会の日常診療経験交流会にも参加してきました。
 コロナ禍では、「新型コロナウイルス感染症に関する薬局アンケート」を2020年9~10月にかけて実施。新型コロナ感染症について薬局・薬剤師が、患者の不安や悩みの受け皿となっていることも明らかとなりました。


世話人会の様子
医薬品や薬供給状況など情報交換し研究会を企画
 毎月の研究会開催後、世話人が医薬品に関する情報や各薬局での薬供給状況などについて情報交換をしています。最近では、新しい世話人(西村ゆかり、水川麻起子、古井裕子各氏)も加わっています。
 研究会の計画は、西村ゆかり世話人を中心に、薬剤師が関心のあるテーマを数カ月先まで検討し、講師依頼します。講師には、製薬会社に気を遣わず本音で講演いただけるようにしており、参加者からも好評を得ています。
ウェブ併用での研究会活動
県外から入会も
 2020年初頭から新型コロナウイルス感染症の流行により、薬科部の活動も研究会以外はできておりません。
 一方、研究会はウェブ配信を併用して継続しており、参加者は来場・ウェブ視聴あわせて平均80人くらいで、100人を超えるときもあります。保険医協会会員、薬科部会員は日本全国からウェブ視聴でき、薬剤師研修センターの単位取得が可能なこともあり、最近は県外からも入会されるようになっています。
 一時、伸び悩んでいた会員数は、薬剤師が興味をもてるテーマと第一線の講師による研究会のウェブ併用という開催方法、認定単位取得方法の変更によって増え始めたようです。
 また、薬剤師以外にも開かれた研究会として医師、歯科医師の研究会参加も増えています。医師の会員からは「薬科部の研究会とは知らずに参加した」と言われることもありました。
今後の薬科部
学び、経験したことをその日から生かせる活動を
 世話人会では、研究会参加者アンケートも参考にしながら、前述のとおり薬科部会員が興味を持てるテーマで開催できるように努めています。今後も、学んだこと、経験したことをその日から活かせるような活動をしていこうと思います。
 研究会後に講師から「今回のテーマ以外に講演できるので、また声をかけてください」と言っていただける関係もできてきました。
 医師、歯科医師と気軽に交流できる、他職種との連携を深めていく薬科部を、今後も多くの保険医協会会員に支えていただきたいです。
薬局での医薬品供給不良の現状
 ある製薬会社の、医薬品製造に対する安全をないがしろにした事態から始まった医薬品の供給不良は、深刻さをます一方で、医療機関・調剤薬局での工夫や情報交換などにより、なんとか乗り切っています。
 最近は購買力のある大手薬局が有利な状態。製薬会社に訊ねて卸問屋への供給を確認するなどしても、小規模薬局に供給が行き届かない事態が生じています。地域に根差す街の小さな薬局が、これまでのように役割を果たしていくことが困難な現状は、大きな社会問題であると思います。
 薬科部としては、2021年3月にジェネリック医薬品メーカー業務停止処分に関する薬局アンケート調査を行いました。アンケートからは、ジェネリック医薬品全体の供給が不安定となり、代替品の手配や患者・処方医への説明、在庫の管理・調整など、薬剤師の業務が通常より大幅に増えている状況が窺えました。また、後発医薬品推進に重きを置く調剤報酬制度や、過剰ともいえる後発医薬品の薬価引き下げに対する疑問の声も寄せられました。
薬科部世話人として(個人の感想)
 兵庫県保険医協会での薬科部活動は四半世紀となり、大変長かったです。小学生だった子どもたちは、それぞれ社会人として独立し、子育て中となりました。私はおばあちゃんとなり、薬局も低空飛行のままです。長年、薬科部世話人の活動を支えてくれた家族に感謝します。
 今後は、全国の保険医協会でも若い薬剤師の方々の活躍に期待したいです。
最後に
 薬科部をずっと支えてくださっている広川恵一協会顧問、滝本桂子元薬科部代表世話人、サポーターとして薬科部活動に参加してくださっている北井明参与、清水映二理事・研究部長、白岩一心副理事長や、漢方関連の研究会で協力いただいている西川実徳先生(姫路市・西川クリニック)はじめ、多くの会員の皆様に感謝します。

2023年の研究会
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これまでのバスツアー
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