2023年11月05日(2053号) ピックアップニュース
第102回評議員会・特別講演 プレインタビュー
社会保障充実へ何が必要なのか 11月19日ご参加ください!
-このたびは評議員会の特別講演の講師をご快諾いただきありがとうございます。
さて、来年は診療報酬改定となります。各医療現場では、感染対策の継続や物価高騰によるコスト増で経営が悪化しています。
しかし、政府内では診療報酬引き上げに否定的な意見が根強いです。背景には、岸田自公政権の防衛費増優先の姿勢があると思います。
岸田首相はなぜこれほど日本の軍事大国化を進めるのでしょうか。
石川 現在の自民党内部では安倍派が数の論理で大きな地位を占めています。その応援を得なければ総裁・首相にはなれないということで、岸田さんも総裁選前に安倍派や麻生派との「話し合い」を行わざるを得ませんでした。そこで「アベ政治の継承」が応援の条件とされたことは、その後の岸田さんの動きを見ても明らかです。
-一方で、ロシアのウクライナ侵攻などを見ると、防衛費増も仕方ないとの意見もあります。
石川 軍拡によって本当に平和が拓けるかというと、国際政治の動きはそう簡単なものではありません。まずロシアによるウクライナ侵略ですが、世界最大の軍拡の成果であるNATOによってもこれは阻止できず、いまも戦争を終わらせることができない状況です。アメリカを頂点とする核保有国がいくつもあるのに、それでも平和を守ることはできていません。ですから「軍拡すれば平和が守れる」という教訓はあの戦争からは導かれません。冷静に事態を見つめることが必要です。
北朝鮮の動きは、最近の日本の軍拡や日米同盟の強化によってむしろ危険を増しています。たとえば8月18日に米日韓首脳による3国の軍事連携強化が確認されましたが、その直後に北朝鮮はこれへの対抗策として海軍への戦術核配備を発表しました。こちらの軍拡があちらの軍拡を引き出すという軍拡のジレンマがはっきり現われています。生まれたのは平和への接近ではなく、緊張、危険の高まりです。ここでも軍拡は平和を拓くことにつながらず、逆の効果を生んでいます。ここをよく考える必要があると思います。
-なるほど。一方の野党についてですが、「市民と野党の共闘」も失敗だったという声もあります。
石川 野党が一定の政策合意のもとに候補者調整をして選挙勝利をめざす「市民と野党の共闘」は、2016年から2021年まですべての国政選挙で大きな成果をあげました。それだけに、これに脅威を感じた自民党等からの強い反撃があり、麻生太郎氏の「立憲共産党」発言などで野党分断の取り組みも進められました。それほどに大きな成果を野党共闘はあげたということが、まず確認されねばならないことです。
その上で現在、共闘の中心に立った立憲と共産の本部のあいだに、次の衆院選に向けた共闘への十分な合意がつくられていないのは事実です。しかし、それによって共闘がまったくできなくなっているわけではありません。昨年の東京都杉並区長選挙、今年の岩手県の県知事選挙、東京都議の立川選挙区補選など全国各地で、様々な形での野党共闘が実現し、その候補が自民党候補を押し退けて当選しています。自分たちの代表を選ぶ選挙にその地域の人がどう取り組むかは、主権者である現場の人たちが決めるべきことです。共闘に向けた各地での機運の高まりは、政党本部間の共闘を引き出していくことにもなるでしょう。全国各地で、そうした動きを強めていきたいところです。
-最後に医師・歯科医師へのメッセージをお願いします。
石川 市民の命と健康を守るために、われわれはこういう仕事がしたい、医療がしたいという医療の専門家ならではの提言をわかりやすく行っていただきたいと思います。医師や看護師等の過重労働の改善は必要ですが、それを医療の充実に不可欠なこと、市民の命と健康を守るのに必要なことという角度から大胆に提起していただきたいと思うのです。命や健康、医療の問題はあらゆる市民にとってわがことですから、「市民の味方」という角度から訴えることが必要で、そうすれば応援する市民もたくさん生まれてくると思います。ただ注意したいのは、医療の制度は決してわかりやすいものではありませんし、病院、医療の現場、そこではたらく人の苦労も外から見えるわけではありません。そこでわかりやすく伝えるということがとても大切になります。むずかしい言葉を使わずに、かみ砕いて訴える必要があります。この問題について、講演当日は多くの府民を味方につけて、維新府政から保健所職員の増員をかちとった大阪の労働組合等の取り組みをご紹介したいと思います。
-本日、お話いただいことを当日はもっと深掘りしていただけるということで、大変楽しみです。