2023年11月25日(2055号) ピックアップニュース
参加記
23年度保団連公害視察会
復旧さえままならないのに女川原発再稼働
参与 川西 敏雄
1日目は学習会、2日目は現地視察だった。
女川原発再稼働差止訴訟の経過と今後について、同訴訟原告団事務局長の日野正美氏が報告した。
住民らが求めていた再稼働差し止めは5月24日、仙台地裁で認められなかった。原告が訴えていた避難計画の不備について判断せず、「放射性物質が異常に放出する事故が発生する具体的危険性を原告側は立証していない」と、原告に立証責任を押し付ける、門前払いの判断であったという。原告側は来年1月の控訴審第2回期日に向け準備を進めているとの話であった。
この避難計画の問題について、宮城協会の矢崎とも子理事から報告があった。原発周辺自治体の病院・有床診療所・在宅療養支援診療所・介護福祉施設に調査し、避難計画について95%が説明を受けたことがなく、9割が避難先の確保が難しいことなどが明らかになったという。
「事前防災と専門家の役割~東日本大震災大川小児童津波事件から考える~」について、大川小児童津波被災国家賠償訴訟原告代理人の吉岡和弘弁護士から報告があった。
津波により児童74人・教員10人が犠牲者となった大川小学校。吉岡氏は訴訟を通じ、学校側の防災体制の不備を認めさせた。校庭のすぐ近くに裏山があったにも関わらず、川に近いところへ避難するなど、事前の準備が十分でなかったという。
2日目は視察だった。個人的には10年ぶりの女川への訪問だった。
原発は、海抜29mの防潮堤が擁壁のようであったが、東日本大震災時と同じように液状化現象を起こすと崩壊の可能性があるという。震災当時、干潮であったことも幸いし、原発は津波に対してわずか0.8mで難を逃れた。国も事故調でもこの被害で収まったのは奇跡とされた。原発建屋は1130カ所にひび割れが生じ、剛性は7割落ちたと報道された。
大川小学校は、現在被災施設として保存されている。学校と体育館をつなぐ2階の通路もねじ曲がっていた。裏山の津波到達マークははるかに頭上にあり、子どもどころか大人も高所に上がらなければ逃れられないと再認識した。ハザードマップで同小学校が避難所に指定されていたなど〝津波は来ない〟という思い込みによる人災が大きいと感じた。
被災地は見た目は綺麗になっていたが、復興どころか復旧もおぼつかないと感じた。宮城県の村井知事は震災後、水道民営化の推進、大学による住民のゲノム情報収集など、〝ショックドクトリン〟的に新自由主義的政策ばかりを進めている。
現地で2人の女子高生と話す機会があり、震災当時の状況や災害公営住宅の現在などについて聞けた。一人は防災士になりたいと夢を語っており、かすかに将来の明るさを感じた。