2023年12月05日(2056号) ピックアップニュース
国際部シンポジウム「日本人も知らなかった『アニメ療法』」
医療現場でのアニメの可能性探る
イタリア出身で精神科医のパントー・フランチェスコ先生と、「機動戦士ガンダム」などプロデューサーとして世界にアニメを発信しつづけている植田益朗氏が話題提供した。口分田真副理事長が司会を、木原章雄理事がコーディネーターを務めた。
パントー先生は、日本のアニメの魅力にひかれ、日本で医師免許を取得し、精神科医として診療している。先生はアニメ療法について、作品を通して自己変化を促したり、物語の力を借りて感情的説得を行うことができると紹介。特に、日本のアニメは多様性とオリジナリティーがあり、セーラームーンや仮面ライダーなどのように変身し、心の成長に伴って見た目も変わるものが多く、優れていると評価した。
具体的な臨床現場での活用としては、好きなアニメ作品の話題を導入として、悩みなどをキャラクターやストーリーの力を借りて聞き出すことができるとした。ただし、時間がかかるが保険適用がされていないため、現在の医療現場で広く導入するには課題が多いと指摘。また、ポケモンGOやアニメ作品にゆかりのある場所を訪れるように、アニメ作品を通じて実生活の経験の広がりを得られることもあるとした。
将来的には、AIなどを活用し、キャラクターをカウンセラーとするなど、医療現場だけでなく、日常でもアニメ療法を活用できる可能性があると展望した。
植田氏は、たまたまアニメ制作会社に就職し、「機動戦士ガンダム」などのアニメーション制作現場に関わり、ファンの声を聞く中で、アニメの魅力に気付いたと自身の来歴を振り返った。
アニメ制作では、どういう人にどんなメッセージを伝えるのか必ず考えており、そのことを通じて、人びとの心を動かす可能性を感じていると紹介。
日本政府は「クールジャパン」などとしてアニメを世界に進出できるビジネスとして捉えているが、ビジネスにとどまらず今後、アニメファンの世代も広がる中で、福祉や医療・介護現場と連携し、アニメの活用の可能性を探っていきたいとした。