兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2023年12月15日(2057号) ピックアップニュース

主張
ガザ「天井のない監獄」 支援の輪を拡げたい

 パレスチナのガザ地区は16年間イスラエル軍によって封鎖され「天井のない監獄」と呼ばれる。
 ガザの面積は、兵庫県の神戸市から北区を除いた面積、すなわち神戸市の六甲山と瀬戸内海に挟まれた地域とほぼ同じである。またガザの人口は神戸市のこの地域の2倍近くになる。すなわち、六甲山、芦屋市、明石市との境にフェンスが張り巡らされ、この中で2倍近い数の人が生活していることになる。
 神戸市のこの地域に医学部や病院があるように、ガザにも医学部や病院がある。しかし医学部を卒業し医師になっても、経済的にも疲弊したガザに十分な給料を払える病院はなく、ガザから外へ出ることもできないため、医師として働ける人は限られる。
 このような絶望的な状況で心が傷つき、鬱々として死を願う人まで出てくる。フェンスの近くで行われる抗議デモには、イスラエル兵に撃たれて死ぬことを望んで参加する若者さえいるという。しかし弾丸は当たれば即死する頭や心臓ではなく、下肢に向かって飛んでくる。殺してしまえば屍を乗り越えて抗議が続くが、けがをさせれば、仲間を助けるための人手が必要になり、抗議の人数を減らせるからだ。弾丸は体に入ると先が破裂して骨や筋肉や血管や神経をずたずたにする蝶形弾丸が使われ、病院に運び込まれても、下肢を切断することになる。死を願うほどまで追い詰められた若者が、今度は、車いすの生活を強いられることになるのだ。
 神戸では1945年の3月から6月にかけて大空襲があり、神戸のほとんどが焼け野原となった。この神戸大空襲で使われた爆弾の量が今回、ガザでは最初の1週間で投下された。神戸大空襲の死者は7千5百人にもなったが、ガザでは12月初旬までに1万6千人が殺された。
 神戸大空襲では、長崎に落とされる原爆と同じ形、同じ重さの通常爆弾(形や色からパンプキンと呼ばれた)が、原爆投下の練習のため、神戸市内4カ所に投下された。今回のガザ侵攻では、イスラエルの閣僚が核の使用に言及し非難を浴びた。広島や長崎の惨状を学んだ者として許せない。
 神戸は大空襲があり、阪神・淡路大震災もあったが、今はほとんどの人が普通の生活を送っている。隣の芦屋市や明石市に自由に行けるし、用が済めば戻ってもこれる。日本中そして世界中と行き来することもできる。
 私たちにとって当たり前の生活をガザの住民が手に入れられるように、支援の輪を拡げたい。
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