兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年3月25日(2065号) ピックアップニュース

2024年度診療報酬改定の要点〈歯科〉
歯科医療の充実にほど遠い改定

 2024年度診療報酬改定で、6月1日から実施される新点数について、特徴や問題点を掲載する。

 今回の改定は、歯科医療機関の現場の実態とかけ離れており、歯科医療の充実と厳しい経営の改善にほど遠いものだ。協会は引き続き、歯科診療報酬大幅引き上げ、不合理是正、窓口負担軽減の実現のため「保険でより良い歯科医療」を求める運動を強めていく。
 以下に主な改定のポイントを紹介する。詳細は3月下旬にお送りする『2024年改定の要点と解説』冊子を参照いただきたい。
1.初再診料の引き上げ、加算への評価の再編
 ①歯科初診料および地域歯科診療支援病院歯科初診料が3点、歯科再診料および地域歯科診療支援病院歯科再診料が2点引き上げられた。
 ②歯科外来診療環境体制加算(外来環)が、歯科外来診療医療安全対策加算(外安全)と歯科外来診療感染対策加算(外感染)に改変された。施設基準がある。経過措置があるが再届出が必要となる外感染1(12点)は、歯科衛生士がいなくても院内感染防止対策研修を受けた職員がいれば届出可能になった。
 ③医療情報・システム基盤整備体制充実加算が、医療情報取得加算に名称変更された。情報の取得・活用が要件となる。
 ④歯科診療特別対応加算(特)の対象患者が拡大され、歯科診療特別対応加算(1~3)に再編された。
2.か強診が廃止、口腔管理体制強化加算の届出に改変
 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)が廃止、口腔管理体制強化加算(口管強)に改変され、「小児の心身の特性」の研修追加などの変更がある。か強診届出済みの医療機関は経過措置があるが、2025年5月までに再届出が必要とされている。エナメル質初期う蝕管理加算260点は廃止され、新設されたエナメル質初期う蝕管理料30点および口管強48点、F局100点、歯清72点が連月算定できる。SPTからP重防に移行した場合は、3月に1回から月1回に算定可能などの変更がある。
3.う蝕の重症化予防としてのF局の再編とCe、根Cに対する医学管理料の新設
 ①エナメル質初期う蝕管理料と根面う蝕管理料が新設された。いずれも歯管・特疾患算定患者で、それぞれ要件を満たせば月1回30点算定する。歯清やF局は同日でも併算定可能。口管強届出医療機関は48点を加算する。
 ②う蝕多発傾向者に対するF局の所定点数は110点のまま据え置かれ、在宅で療養中の15歳以下の患者が追加された。
4.小機能・口機能の再編と歯リハ3の新設
 ①小機能を算定し口腔機能の発達不全を有する18歳未満の患者、または口機能を算定し口腔機能の低下を来している患者に対し、療養上必要な管理および口腔機能の訓練を実施した場合に算定できる歯科口腔リハビリテーション料3(歯リハ3)が新設された。
 ②小機能、口機能ともに60点に引き下げられた。口管強届出医療機関は50点を加算する。新設された歯リハ3・50点(月2回)は、小機能・口機能を算定し、療養上の指導と訓練を実施した場合に算定する。また歯科衛生実地指導の際に、口腔機能にかかる指導を併せて実施すれば、口腔機能指導加算10点を実地指に加算できる。
 ③舌圧検査が、口腔機能の発達不全を疑う患者または有する患者で小機能、特疾管、小訪問口腔リハで継続管理する場合に算定できることとされた。また、舌接触補助床の対象患者に、舌圧検査によって口腔機能低下症を診断した患者が加わった。
5.後発医薬品の使用促進に伴う評価の再編
 ①一般名処方加算と外来後発医薬品使用体制加算は3点引き上げられたが、院内掲示等が必要になった。薬剤情報提供料は6点、処方箋料は8点引き下げられた。
 ②後発医薬品の上市後5年以上経過したもの、置換率が50%以上となったものを対象に、医療上の必要性や在庫なし以外は原則選定療養として、10月から患者負担になる。今後投薬以外でも保険診療を妨げる選定療養拡大に注視が必要だ。
6.処置・手術関連の点数引き上げや適応拡大
 ①抜髄や生活歯髄切断に対する麻酔薬剤料が算定可能になった。
 ②歯髄保護処置、歯髄切断、抜髄、感染根管処置、根管貼薬処置、加圧根管充填処置がそれぞれ引き上げられた。また、3根管以上の加圧根充で手術用顕微鏡加算を算定する場合に限定されていた、Ni-Tiロータリーファイル加算が、施設基準の届出不要で、CT撮影をもとに実施した場合に算定できることとされた。
 ③歯周病処置(P処)の算定が、特定薬剤の「注入」から「使用」に変更になり、軟膏の塗布も可能になった。
 ④歯管または特疾管を算定し、算定から6月を経過した日以降に咬耗や歯ぎしりなどで再度の初期う蝕早期充填処置(シーラント)が必要になった場合は算定できることとされた。
 ⑤糖尿病患者に対する歯周病安定期治療(SPT)に、歯周病ハイリスク患者加算80点が新設された。医科の主治医からの文書提供が必要となる。「糖尿病の状態により歯周病が重症化するおそれがある場合」は3月に満たなくても2回目以降のSPT算定ができることになった。
 ⑥18歳未満で、外傷歯にTFixなどを行った患者に対し、受傷から1年以内に外傷歯の保護を目的とする口腔内装置を装着した場合は、口腔内装置2を算定することとなった。
 ⑦口菌検によって口腔バイオフィルム感染症と診断された患者に対する口腔バイオフィルム除去処置が新設された。無歯顎の患者に対しても算定できる。
7.歯冠修復・欠損補綴の新規技術と適応拡大、補綴物維持管理料の縮小
 ①補管について、3/4冠、4/5冠、FMCおよび前装MCの単冠が対象外となった。全てのブリッジ、非金属冠、TiC、前装TiCは引き続き補管の対象。
 ②レジン前装金属冠についてブリッジ支台の5番にも適用が拡大された。一方、レジン前装金属冠の臼歯部の形成料加算が、生PZ、失PZとも引き下げられた。
 ③歯CADⅢの大臼歯部への適応が拡大された。歯CADⅢの場合は大臼歯にエンドクラウンが適応されることとされた。上顎6番または7番の3根のうち2根を残す分割抜歯をした場合、歯CADⅢに限り大臼歯として算定することとされた。下顎大臼歯の分割抜歯には適応されない。
 ④CAD/CAMインレー形成に対する加算が新設された。また、光学印象が保険適応となり、形成後の印象採得、咬合採得に代えて、光学印象および光学印象技工士連携加算が算定できることとされた。
 ⑤小児保隙装置の装着部位が第一大臼歯に拡大された。
 ⑥2番および下顎1番の1歯欠損の場合、接着ブリッジの支台歯1歯(生活歯に限る)のみの延長ブリッジが適応されることとされた。
 ⑦下顎大臼歯を分割掻把し歯内療法をした場合の歯冠修復にチタン冠が適応されることとされた。
 ⑧歯科用金属アレルギー患者については⑤6⑥⑦のような場合でも、高強度硬質レジンブリッジが装着できることとされた。
 ⑨歯科技工士との連携を評価した歯科技工士連携加算が新設された。
 ⑩新製有床義歯管理料(義管)の算定月から起算して1年超であった再算定までの期間が6カ月超に短縮された。
 ⑪メタルコア(間接法)、インレー、3/4冠、4/5冠、FMC、高強度硬質レジンブリッジ、有床義歯、鋳造鉤、線鉤、コンビネーション鉤、根面板、キーパー付き根面板が引き上げられた。有床義歯修理および有床義歯内面適合法の歯技工1・2はそれぞれ引き上げられた。熱可塑性樹脂有床義歯は引き下げられ、PDの材料料を除く製作料は有床義歯と同点数になった。
8.医科、調剤薬局などへの情報提供や情報共有
 ①診療情報等連携共有料(情共)について、診療情報等の提供を求める際、文書だけでなく電話、FAX、電子メールなどでも可能となった。保険薬局への照会時にも算定可能となった。診療情報等連携共有料2が新設され、別の医科医療機関から診療情報を求められた場合の返書に対しても算定が可能となった。
 ②新興感染症等の患者が総医・在歯総医および医管・在歯管の対象となった。また、認知症患者が総医の対象となり、抗血小板剤投与中の患者、神経難病の患者が総医・在歯総医の対象となった。
 ③診療情報提供料(Ⅰ)の情報提供先に学校歯科医などが追加された。
 ④歯科衛生士実地指導料の、患者に対する指導内容の文書提供が、3月に1回から、6月に1回に変更された。業務の記録は毎回必要。
9.在宅医療の人数区分の再編、ICT加算の拡大
 ①訪問診療料が人数に応じて3区分から5区分に細分化された。訪問診療1は時間要件なく1100点が算定できることとなった。これに伴い、20分未満の場合でも歯科訪問診療移行加算(訪移行)や在宅歯科医療推進加算(在推進)等が算定可能となった。同一建物で同日に4人以上の場合は、引き下げになる。
 ②在宅療養支援歯科病院が新設された。施設基準の届出が必要で、在宅歯科診療の後方支援機能や介護・福祉施設との十分な連携実績などが求められる。
 ③歯在管、訪問口腔リハ、小訪問口腔リハにおけるNST加算(1~2)が独立評価となり、在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料(1~3)として算定することとされた。歯在管、訪問口腔リハ、小訪問口腔リハに対し、他の保険医療機関などからの情報提供に基づき管理計画を作成した場合の在宅歯科医療連携加算などが新設された。
10.周術期、回復期、終末期の口腔管理の評価と病診連携
 ①周術期等専門的口腔衛生処置1(術口衛1)の算定要件から、入院中の患者が削除された。術口衛2が管理中1回から月1回算定できることとされた。
 ②回復期等口腔機能管理料および回復期等専門的口腔衛生処置が新設された。療養病棟入院基本料等を算定する患者が対象になる。
 ③緩和ケアを実施する患者に対する訪問歯科衛生指導料(訪衛指)が月4回から8回まで、周Ⅲ・周Ⅳを算定した月の周術期等専門的口腔衛生処置1(術口衛1)が月2回から4回まで算定できるよう回数制限が緩和された。
 ④非経口摂取患者口腔粘膜処置(非経口処)の対象患者に「経口摂取が可能だが、経口摂取がごく少量に限られる患者」が、口腔細菌定量検査(口菌検)の対象患者に入院中の患者が追加された。
11.歯科矯正相談料の新設
 学校歯科健診などで咬合異常または顎変形症の疑いがあると判断された患者に対して、歯科矯正治療の保険適用の可否を判断するために必要な検査・診断などを行い、診断結果などを文書提供した場合に算定する歯科矯正相談料が新設された。
12.歯科外来・在宅ベースアップ評価料ⅠおよびⅡの新設
 歯科初診料・再診料の引き上げとは別に、医師・歯科医師を除く歯科衛生士、歯科技工士、歯科業務補助者などの賃上げを実施する体制に対して、歯科外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰおよび歯科外来・在宅ベースアップ評価料Ⅱが新設された。ただし、恒常的な項目設定になるのかは注意が必要。近畿厚生局に届出・実績報告が必要。
13.介護保険の改定
 居宅療養管理指導費は、1単位ずつ引き上げられた。終末期がん患者について、歯科衛生士等による居宅療養管理指導費等の算定回数上限が緩和され、1月に6回まで算定できることとなった。
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