2024年4月25日(2068号) ピックアップニュース
税経部より
『定額減税』実務のポイント まずは対象者と控除税額の確認を
協会税務講師団 松田 力税理士
はじめに
2024(令和6)年6月1日以後最初に支払う給与等につき源泉徴収を行う際から、定額減税を行う必要があります。定額減税とは、税額を一定額減額する減税の方法です。給与等から源泉徴収する所得税、住民税から定額減税を行うこととなり、給与計算事務に大きな変更、負担が生じます。ここでは定額減税の概要についてお伝えします。1.所得税の定額減税の概要
①定額減税の対象者定額減税の対象者は、2024年分所得税の納税義務のある居住者で、2024年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である者です。
②定額減税額
定額減税額は、次の金額の合計額です。ただし、その合計額がその者の「2024年分の所得税額」を超える場合には、減税される額はその所得税額が限度となります。
(ア)本人(居住者に限ります)
所得税30,000円
(イ)同一生計配偶者または扶養親族(居住者に限ります)
1人につき所得税30,000円
2.同一生計配偶者とは
同一生計配偶者とは、その年12月31日の現況で、納税者と生計を一にする配偶者で、合計所得金額が48万円(給与収入だけの場合は給与収入が103万円)以下の者をいいます。源泉控除対象配偶者(合計所得金額が95万円以下の者)とは異なりますので注意が必要です。3.扶養親族とは
扶養親族とは、その年12月31日の現況で、納税者と生計を一にする配偶者以外の親族で、合計所得金額が48万円(給与収入だけの場合は給与収入が103万円)以下の者をいいます。16歳未満の扶養親族につきましては、所得控除である扶養控除を受けることはできませんが、定額減税を受けることはできますので注意が必要です。4.所得税の定額減税の実施方法
定額減税には、①月次減税と②年調減税の2種類があります。給与計算が手間になるから、年末調整で定額減税を行うから、確定申告をするから、などの理由により定額減税を行わないということはできません。給与所得者の定額減税は、給与所得者の扶養控除等申告書を提出している給与等の支払者のもとで行われます。
①月次減税
2024年6月1日以後最初に支払いを受ける給与等(賞与を含む)に係る源泉徴収税額から控除します。控除しきれない部分の金額については、それ以後2024年中に支払う給与等に係る源泉徴収税額から順次控除します。
②年調減税
年末調整の対象者で、2024年中に支払いの確定した給与等を基に計算した年末調整により所得税額がある者は、その所得税額から年調減税額を控除します。
つまり、2024年6月1日以後最初に支払いを受ける給与等から月次減税を行い、最終的には年調減税で精算するということです(計算例1,2)。
5.月次減税の対象者および月次減税額
月次減税の対象者は、2024年6月1日現在、給与等の支払者のもとで勤務している人のうち、給与所得者の扶養控除等申告書を提出している居住者(源泉徴収税額表の甲欄が適用される者)です。この者を基準日在職者といいます。2024年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円超である者も月次減税の対象となりますので注意が必要です。月次減税額は、2024年6月1日現在において基準日在職者から提出されている給与所得者の扶養控除等申告書に記載されている同一生計配偶者と扶養親族を基に決定します。2024年6月1日現在において給与等の支払者に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない者(源泉徴収税額表の乙欄又は丙欄が適用される者)、2024年6月1日より後に新たに雇用された者は月次減税の対象となりません。
6.年調減税の対象者
年末調整の対象となる者は、原則年調減税の対象となります。年調減税は、2024年12月31日現在において提出されている給与所得者の扶養控除等申告書に記載されている同一生計配偶者と扶養親族を基に行います。合計所得金額が1,805万円超である者は年調減税の適用を受けることができません。従いまして、合計所得金が1,805万円超である者は月次減税でいったん減税を行いますが、その減税分は年末調整で納税することとなります(つまり定額減税はなし)。なお給与収入が2,000万円超である者は年末調整を行うことができませんので、確定申告で月次減税の精算を行うこととなります。7.所得税の定額減税
所得税の定額減税を簡潔に述べると、下記のとおりとなります。①基準日在職者および基準日在職者の同一生計配偶者と扶養親族を確認し、月次減税額を確定する。
②2024年6月1日以後最初に支払う給与等につき源泉徴収を行う際から、上記①の金額に達するまで月次減税を行う。
③2024年6月1日より後の入退職、同一生計配偶者や扶養親族の異動は、月次減税を行う際には一切考慮しない。そのような異動は年調減税で精算する。
8.住民税の定額減税
住民税からも定額減税が行われます。定額減税額は本人10,000円、同一生計配偶者または扶養親族1人につき10,000円です。住民税の定額減税は、2024年6月の給与にかかる住民税の特別徴収は行わず、定額減税後の税額を11分割して、2024年7月~2025年5月分の給与から天引きします。つまり、市町村から通知される特別徴収の通知書どおりに計算をすれば大丈夫です。9.定額減税で引ききれない場合
定額減税は2024年の給与等より実施され、2025年の給与等からは実施されません。2024年の給与等より定額減税額が引ききれなかった場合は、定額減税しきれないと見込まれる者への給付を含め、市区町村から各種の給付措置が行われます。ポイント
・今年6月以降に支払う給与・賞与から源泉徴収する所得税額・住民税額より、所得税30,000円+住民税10,000円を控除する(対象者に同一生計配偶者や扶養親族がいる場合には、その家族の分も合算して控除する)
・一度で引ききれない場合は翌月に繰り越し、12月まで引ききれない場合は年末調整で精算する
・年末調整でも引ききれない場合は、対象者が居住する自治体から直接給付を受ける
お問い合わせは、TEL 078-393-1807(税経部)まで
図1(計算例1)
図2(計算例2)