兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2024年5月15日(2069号) ピックアップニュース

国際部が市民公開シンポジウム「入管『外国人収容所』の医療問題」
命・健康脅かす入管医療改善を

2069_07.jpg

ウィシュマさん名古屋入管死亡事件弁護団の松本弁護士(右)と、外国人労働者・難民をサポートする松坂氏(左)が話題提供

 国際部は4月21日、「入管『外国人収容所』の医療問題」をテーマに市民公開シンポジウムを協会会議室とオンラインで開催し、23人(うちZoom10人)が参加した。
 ウィシュマさん名古屋入管死亡事件弁護団で関西合同法律事務所の松本亜土弁護士と、「TRY~外国人労働者・難民と共に歩む会」の松坂真帆さんが話題提供し、日本の入国管理政策の非人道性、改悪入管法の問題点などについて、入管に収容されている人々の実態に基づいて語り、命と人権が脅かされている現状を改善するため、医療関係者も含め幅広い人々が連帯して声を上げることが必要だと訴えた。
[感想文] 国際部 市民公開シンポジウム
入管での人権蹂躙 傍観者であってはいけない
 国際部が4月21日に開催した市民公開シンポジウム「入管『外国人収容所』の医療問題」に参加した半田伸夫先生の感想を紹介する。

 表記シンポジウムにZoomで参加した。
 初めに関西合同法律事務所で、ウィシュマさん名古屋入管死亡事件弁護団の一員である松本亜土弁護士の講演があった。入国ビザが切れて在留資格がなくなった日本国籍以外のヒト(外国人)は入管により収容され、在留資格をとらなければ強制送還されることになる。
 スリランカ人のウィシュマさんは日本で英語教師を目指して来日した。しかし家庭事情から在留資格を失い、名古屋入管に収容された。家庭内暴力と入管での強制送還の圧力などの心的ストレスのため神経性食欲不振症に近い状態となって食事が食べられない状態となった。本来は十分な水分と栄養を点滴などで補充しなければ死に至る状態でありながら、消極的観察のみで、最終的には入管内で死亡する事態となった。
 その状態が入管内のビデオによって公となり、裁判が行われている。刑事と民事の両面で訴訟を行ったが、刑事は不起訴となり、現在は民事での争いとなっている。
 そのビデオからは、日に日に弱っていくウィシュマさんの生々しい状況が映し出され、正視に堪えなかった。なぜ早く病院に受診させなかったのだろうか、医師や看護師は最悪の状態を予測できなかったのだろうか。疑問は尽きない。
 次に「TRY~外国人労働者・難民とともに歩む会」の松坂真帆氏が現時点における、強制収容所と難民申請の実態について話された。
 大阪入管では6人一部屋で、プライバシーはなく、運動場もないため体を十分に動かすこともできない。食事も基本は日本食であり、量的にも十分とは言えない。あたかも囚人のような待遇である。欧米からは日本における収監されたヒト(囚人や被疑者)の人権侵害を指摘されているが、収容所の人権も蹂躙されている。
 TRYはこれらの問題点を地道に改善していくよう努力されていて、今後はわれわれ医療者からの協力も必要だと強調された。われわれも傍観者であってはいけないと思った。

【西宮市 半田 伸夫】

バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方