2024年5月15日(2069号) ピックアップニュース
みんなで語ろう窓口負担ゼロ
「対論・ゼロの会2024」
基調講演は、日本弁護士連合会貧困問題対策本部事務局次長の森弘典弁護士が務め、兵庫協会の西山裕康理事長、千葉協会の宇佐美宏副会長(保団連歯科代表)も報告を行った。
西山理事長は、「『医療費の窓口負担』に関するQ&A」として、兵庫協会国際部の調査をもとに日本の医療費窓口負担は年齢や所得で負担割合が異なる、世界でもまれな制度であると解説。
多くの医療行為を受けた人が多く負担するべきだという「受益者負担論」について、「医療は病気やけがになった人を日常生活が送れる状態に戻すものであり、利益ではない」「高速道路や鉄道のグリーン車とは、根本的に異なる『受難者』負担だ」と述べた。
さらに、窓口負担をなくすと患者さんがコンビニ受診をし、医師も念のためとそれほど必要のない検査などを行うというモラルハザードが起きるという政府の論調に対し、「窓口負担を引き上げれば、経済的に余裕のある層だけが、医療機関をコンビニのように受診できることになる。こちらの方が社会としてよほどモラルがない」と批判し、窓口負担の解消を訴えた。
森弁護士は、「人権としての『医療へのアクセス』保障の観点から見た『一部負担金』」と題し、医療へのアクセスは、憲法13条(個人の尊厳)、憲法25条(生存権)、憲法14条(法の下の平等)から導き出される人権であり、それを制限する窓口負担は解消すべきだと解説した。
宇佐美先生は「歯科医療と『医療費の窓口負担』」をテーマに、歯科は医科よりも経済的理由による受診抑制の影響を受けやすいことを様々な調査に基づいて明らかにした。また、後発医薬品のある先発医薬品が選定療養とされることについて、今後、医科分野でも歯科のように治療行為本体にも事実上の混合診療とも言える選定療養制度が持ち込まれる恐れがあり、そうなれば、今以上に受診抑制が進むと警鐘を鳴らした。