兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年5月25日(2070号) ピックアップニュース

主張
市民とともに現行の保険証の存続求めよう

 マイナ保険証の4月の利用率は6.56%、昨年12月の4.29%よりは上昇したものの相変わらずの低迷ぶりである。
 何のメリットも感じないマイナ保険証に対する国民の正直な反応だろう。日本の携帯電話所有者のスマホ比率は96.3%というが、便利なものは放っておいても急速に普及するものだ。
 一方、マイナ保険証は、政府が普及に躍起になり、医療機関への支援金制度を設けるかと思えば、一転、医療機関の受付での声かけが足らないとして利用促進に熱心でない医療機関を密告させる通達を出す。
 4月25日、日本健康会議(共同代表=小林健日本商工会議所会頭、老川祥一読売新聞グループ会長)が医療DX推進フォーラムを開催した。テーマは「使ってイイナ!マイナ保険証」で、5~7月をマイナ保険証利用促進集中取り組み月間と位置づけ、「マイナ保険証利用促進宣言」を行った。
 この日本健康会議の第二期実行委員には、小林、老川氏のほかにも日本経団連、経済同友会のトップや日本医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、栄養士会の会長などが名前を連ねる。
 経済界と政界、医療界の一部が気乗りのしない国民や医療者をなだめ、すかし、脅しながら必死で説得するという構図には胡散臭いものを感じずにはいられない。
 利用者である患者(国民)や現場で対応する医療者にとって何のメリットもないどころか過大な負担を課すマイナ保険証への切り替えを、これほどまでに急ぐ理由のひとつには、やはり健康情報の商用化があるのだろう。
 国内のみならず海外企業にとって、国民皆保険で守られた日本人の健康情報は商業的に大きな魅力だ。糖尿病と診断された翌日にルームランナーや万歩計のダイレクトメールが送られてくるなどという世界がすぐそこまで来ている。
 マイナ保険証によって丸裸にされた情報の漏出は、患者の権利侵害と同時に医師の守秘義務を逸脱するものでもある。どんな病気や障害でどこの医療機関を受診してどんな薬を服用しているのか、さらには過去の既往歴や家族の病歴までも知ることができる。
 マイナンバーカードの取得は任意であるにもかかわらず、マイナ保険証への一本化は事実上の強制を意味する。そして、マイナカードに紐づけられる情報が増大しマイナポータルで閲覧できる情報も増加するということは、何らかの方法で不正に閲覧された場合には悪用される可能性が極めて高い。
 医療者側からの発信だけではなく、市民とこの危険性を共有することで大きなうねりを作り、共にマイナ保険証への一本化反対と現行の保険証の存続を強く求めていきたい。
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