兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年6月15日(2072号) ピックアップニュース

尼崎社会保障推進協議会が介護保険学習会
介護保険の充実は市民の願い国は異次元の財政出動を

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日下部先生は介護保険の窮状を解説し、現状改善の抜本策を提案

 尼崎支部が加盟する尼崎社会保障推進協議会(尼崎社保協)は、5月11日に尼崎市内で学習会「どうなる?!介護保険 介護報酬改定の問題点と狙いとは」を開催し、78人が参加した。大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員長・佛教大学社会福祉学部非常勤講師の日下部雅喜先生が講師を務めた。

 最初に尼崎社保協会長の綿谷茂樹先生(協会理事)が、「今回の介護報酬改定で事業所はさらに苦しい経営にさらされる。一番困るのは利用者の方であり、介護が受けられなければ健康状態が悪化する。私たちはどうすればよいのか、一緒に考えて運動していきましょう」とあいさつした。
 講師の日下部先生は、2023年の介護事業者の倒産は過去2番目となるなど介護現場は待ったなしの危機的な状況にあり、その根本原因は低すぎる介護報酬にあると指摘した。にもかかわらず、今春の介護報酬改定は+1.59%にとどまり焼け石に水にもならないもので、さらなる倒産が起きると警鐘を鳴らした。とりわけ訪問介護は、赤字事業所が4割以上を占めているにもかかわらず引き下げられ、現場から「訪問介護の担い手の誇りを傷つける無慈悲な判断」との批判が巻き起こっており、緊急に再改定が必要と述べた。
 介護報酬の改悪にとどまらず政府は、利用者負担2割の対象の拡大・ケアプランへの自己負担導入・軽度者(要介護1・2)の総合事業移行について、2027年度までに結論を出すことにしていると解説。これらの改悪を許さない運動を提起した。
 日下部先生は、尼崎市の介護保険の特徴についても詳しく解説。介護保険料(基準月額)が2024年度から約900円も引き上げられ7493円になること、国や兵庫県全体と比較すると施設サービスが少ない一方訪問系サービスが多いこと、特別養護老人ホーム待機者が180人いるが今後3年間で定員増は29人のみ、介護老人保健施設は150人減の一方、有料老人ホームは200人増を目標にしていることなどを指摘、尼崎市は高齢者の安心できる居場所づくりを行うべきとした。
 最後に日下部先生は、こうした状況を改善するためには介護ヘの「異次元」の財政出動をすべきだとして、①介護現場の抜本的な賃金と労働条件の引き上げ、②現在25%に留まっている国庫負担金の50%への引き上げ、③利用者の負担増や介護サービス削減の中止を提案した。また、24年度政府予算で介護は3兆7188億円で前年度1%増にすぎない一方、防衛費は7.9兆円でこの2年間だけでも2.5兆円増と告発、全国各地で社会保障にお金を回させる運動を強めようと訴えた。
 参加者からは、「ヘルパーをしているが、さまざまな制限があり十分なケアができない。安心して利用してもらえる制度にしてほしい」「生活は苦しくなる一方なのに介護保険料が引き上げられるのは納得できない」「介護保険の充実は市民の願い。政治を変えないといけない」などの感想が出された。
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