兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年7月05日(2074号) ピックアップニュース

歯科診療報酬改定アンケートに252人が協力
ベースアップ評価料の施設基準「届出しない・しない予定」「様子をみる」77%
副理事長  川村 雅之

 協会歯科部会は、改定直前の5月26日の研究会時と6月6日~25日にFAXで、改定についてのアンケートを実施し、252人から回答があった。結果のポイントと分析について、川村副理事長のコメントを紹介する。

 診療報酬改定が6月実施となったが、歯科では多岐にわたる細かな変更と新設項目があり、3月の告示通知発出以降も訂正通知や疑義解釈が出され混乱した。実質マイナス改定のなかで歯科診療と関係のない医療DXやベースアップ評価料に財源が割かれ、現場が望む改定にならなかった。基本診療料、歯科技術料を大幅に引き上げるべきだ。
 歯科外来・在宅ベースアップ評価料について、「届出した・する予定」は59人(23.4%)だった。「しばらく様子をみる」は101人(40.1%)、「届出しない・しない予定」は92人(36.5%)の回答だった(図1)。
 「届出した・する予定」の場合、届出手続きの担当は、院長48人(81.3%)、事務長10人(16.9%)、社労士等委託1人(1.6%)だった。法人や病院歯科は事務長が対応し、一般の歯科診療所は経費をかけずに院長が時間をかけて対応している状況が見て取れる。
「実務が煩雑で対応困難」66%
 「しばらく様子をみる」「届け出しない、しない予定」と回答した193人について、その理由(複数回答)で一番多かったのは、「①届出の計画書や報告書などの実務が煩雑で対応が困難」128人(66.3%)だった。「③次の改定以降も同レベルのベースアップを続けられる医院収益が確保できない」79人(40.9%)、「⑥診療報酬の財源は、初再診料や医療技術の評価引き上げに回すべきだと思うから」65人(33.7%)と続く(図2)。
 2割の方がベースアップ評価料の届出をしているが、これは長年にわたる低い診療報酬により、歯科医院経営が厳しさを増す中、なんとか賃金引き上げ財源の確保をとの選択であろう。しかし大多数は、届出しない、様子をみることにしている。ちなみに私の医院も届出していない。歯科訪問診療の減算などで経営は厳しいが、評価料については、院内のスタッフ相互、患者と医療者の分断につながる上、診療行為と関係ない「賃上げ」のための加算点数を診療報酬に設けるのはそもそもおかしいと思うからである。
診療報酬改善と不合理是正求める
 改定で影響があると思う項目については、複数回答で多数の項目にチェックをいただいた。
 特徴的なのは、①「『外感染1』の新設で人員要件が緩和され歯科衛生士の雇用ができていなくても届出ができるようになったこと」。これは一定の改善として評価したいが、そもそもすべての医療機関に対して感染対策費用が増大しているのだから施設基準なしで評価する、または初再診料を大幅に引き上げることが必要だ。
 ②「補管の対象から金属の単冠が外れたこと」。中途半端な改定のためにマイナス感があるが、2年間の維持管理についての成功報酬である補管の対象から外れたということは、やむを得ないケースの再作製が歯科医師の判断で可能になったということでもある。補管導入時に歯科技術点数を分離したのだから歯科技術料の大幅引き上げを求めたい。
 ③「ブリッジ支台歯の前装MCが5番まで適応拡大」「CAD/CAM冠・インレーの適応拡大」、CAD/CAM冠材料Ⅲについて通知の文言では分かりづらく、適用の可否をすべてのケースで示してほしいとの声があった。
 ④「抜髄と生切時に麻酔薬剤料が算定可能になったこと」。使用した麻酔薬剤料については算定できるようさらなる拡大を求めたい。
 自由意見では、「感染対策費用が増大しているのに基本診療料の評価が低すぎる」「DXやベースアップでなく歯科技術料の点数を上げてほしい」「材料費高騰で物価高に対応できない」「相変わらず義歯の評価が低いままだ」「4人以上の歯科訪問診療料の減額はひどい。訪問するなということか」「医科と比べても医学管理の点数が歯管の初月80点など低すぎる」など多数の声が寄せられている。
 協会歯科部会は今後も厚労省に対し、歯科の経営状況や長年の課題を踏まえた診療報酬改善、不合理是正を強く求めて現場からの声を届け要請していく。

図1 歯科外来・在宅 ベースアップ評価料の新設について
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図2 しばらく様子をみる、届け出しない、しない予定 と回答した理由は?(193人中、複数回答可)
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