2024年7月25日(2076号) ピックアップニュース
「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会・市民学習会
口腔ケアで"震災関連死"防げ
加藤擁一先生(協会副理事長・歯科部会長)が開会あいさつ。「口腔の健康は国民にとってますます重要な関心事になっている。岸田政権は防衛費を倍加し、本格的な社会保障削減をもくろんでいるが、国民的運動で押し返そう」と呼びかけた。
足立先生は、1995年の阪神・淡路大震災の経験を振り返る中で「阪神・淡路では6434人が死亡認定を受けているが、家屋の倒壊や焼死などの直接死は5507人。残りの927人は地震を生き延びた後に命を落とす〝災害関連死〟で、当時はじめて提唱された概念」「助かった可能性があることから『救えた命(Preventable Disaster Death:PDD)』とも表現される。関連死を予防しその発生をなくすことは医療に関わる者に与えられた大きな使命」とした。
また、能登半島地震の発災直後に被災地入りをした経験を紹介しつつ「地震発生から半年あまり、長引く避難所生活による被災者の健康への影響が心配される。過去の災害で関連死の死因上位に挙がる肺炎は、口の中の不衛生が一因で起こっている」「被災者は貴重な水を節約しようと歯の手入れを後回しにしがち。共同の手洗い場を使うことへの遠慮と不便さもその背景にある」と災害時こそ口腔ケアが必要であることを強調。「実際に、2004年の中越地震において組織的な口腔ケアが提供された結果、関連死に占める肺炎の割合は減少した。避難所における効果的な水場の設置、口腔ケアの用品の使用法や摂食、栄養管理に関する食支援など、被災者のみならず支援にあたる医療や行政関係者への働きかけも大切」と歯科医療側の役割の重要性も指摘した。
ゲストスピーカーとして、石川県輪島市の訪問看護師・中村悦子氏がオンラインで話題提供。能登半島地震で自らも被災しながら、現在は市内の福祉避難所の運営や、被災高齢者らの支援、訪問看護に奮闘している状況を報告。「もともとの過疎地域の上に震災が起こり、マンパワー不足は否めないが、口腔ケアに取り組んでいる福祉避難所で肺炎ゼロを達成しているところもあり、足立先生の指摘には大いに共感する」とした。
最後に足立先生は、「高齢者にとって口腔ケアは、むし歯や歯周病の予防というよりも、肺炎から『命を守る』ためであり、被災地における高齢者はすべて関連死の〝予備群〟ととらえ、発症を予防する視点が必要」「平時からの健康管理の一つとして、歯科治療とケアによる『噛める・飲める』の維持が災害時を生き抜く力となるのではないか」と提言した。
冨澤洪基先生(協会評議員・尼崎医療生活協同組合生協歯科)が司会を務めた。