兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年8月25日(2078号) ピックアップニュース

主張 被爆79年
今こそ核兵器廃絶を

 「原爆を作る人々よ! しばし手を休め 眼をとじ給え...」長崎で被爆した福田須磨子さんの詩である。幾万の命が奪われ、家族が破壊され、原爆病の不安にさいなまされ、悲しみと苦しみがいつまでも尾を引いていく、と綴る。今年の長崎の平和宣言で鈴木長崎市長が紹介した。宣言が指摘するように、原爆は、被爆直後だけでなく、生涯にわたって心身両面に、今も被爆者を苦しめている。
 被爆79年目の今年、世界は核戦争の危機に直面している。ロシアによるウクライナへの、イスラエルによるパレスチナへの侵略はとどまるところを知らず、両国首脳は核兵器の使用も否定しない。国連のグテーレス事務総長は「核リスクは過去数十年で最高レベル」と警鐘を鳴らす。広島・長崎で開催された原水爆禁止世界大会では、各国の代表らが、この「瀬戸際」ともいうべき状況に強い懸念を表明した。両国には、ただちに不法な侵略戦争を中止するとともに、核兵器の使用は絶対に行わないよう求める。
 核兵器禁止条約が発効して3年になる。核兵器の使用は「壊滅的で非人道的な結末を招く」「核兵器が再び使用されないことを保証する唯一の方法として、核兵器を完全に廃絶する」との理念を掲げ、現在70カ国が批准している。一方、米ロをはじめ核兵器保有国は、核兵器を持つことによって、核戦争が回避できるという「核抑止」論を主張する。残念なことに、日本政府もこれに追随し、核禁条約に背を向けている。
 昨年の広島市平和宣言で松井広島市長は、「世界の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取り組みを早急に始める必要があるのではないか。平和な世界の実現に向け、為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要になっている」として核禁条約への参加を呼びかけた。私たちはこの、被爆地の訴えを強く支持する。
 「核戦争に勝者はなく、決して行ってはならない」、2022年にようやく5大核保有国が認めて共同声明を発した。ならば、待ったなしの実行が問われている。
 冒頭の福田さんの詩は、最後にこう呼びかけている。「原爆を作る人々よ! 今こそ ためらうことなく 手の中にある一切を放棄するのだ そこに初めて 真の平和が生まれ 人間は人間として蘇ることが出来るのだ」、今こそ、核兵器廃絶に立ち上がろう。
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