兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年8月25日(2078号) ピックアップニュース

国際部が市民講演会
ウクライナの現場伝える 「自分ごととして考えて」

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ウクライナの訪問を続け、物資支援や現地の様子を発信し続けている丸山美和さん

 ウクライナの人たちに、日本にいる私たちができることは--。国際部は8月3日に協会会議室で市民講演会を開催。ジャーナリストの丸山美和さんが「日本にいる私たちができることは?~ウクライナ侵略・現場を歩き続けて~」をテーマに講演し、市民ら48人(うちZoom19人)が参加した。

 ウクライナの隣国であるポーランド在住の丸山さんは、大学の講師を務める傍ら、ロシアによる侵攻以降これまで20回以上ウクライナを訪れ、物資支援などのボランティアやジャーナリストとして現地の様子を世界に発信している。
 丸山さんは、ウクライナの病院はけがをした兵士であふれており、満足な食事も提供できない状況であると紹介。
 また戦地では体だけでなく心にも大きな傷を負うが、心理的なケアも不足しており、オンラインも含めた医師の派遣が必要だと訴えた。
 ポーランドに逃げてきた女性や子どもたちも、住み慣れた生活を突然失ったことから精神的な不安やストレスが深刻になっており、危険だとわかっていてもウクライナに帰国を決断した人も少なくないとした。 2078_06.jpg

丸山さんはウクライナの小児病院に撃ち込まれた実際の弾丸を示し、ウクライナの状況に目を向けてほしいと訴えた


 さらに、移住した子どもが受けるいじめや、「仕事を得るためには健康診断を受ける必要がある」と高額な費用をだまし取ろうとする詐欺など、ウクライナの人々がおかれている現状を紹介。
 他にも総動員令により18~60歳の男性は出国が禁止されていることなど、戦争は「人々が大切にされない」状況を生み出しており、一刻も早い停戦を訴えた。
 最後に、日本にいる人々には「『評論家』にならず自分ごととして考え、ウクライナの人々に寄り添い続けてほしい」とし、経済支援だけではなく文化交流などを通じて「ともに生きていく仲間」として手を取り合おうと呼びかけた。
 会場では、ウクライナ人アーティストのスヴィトラーナさんの絵画、ナタリアさんのアクセサリーなどの展示・販売コーナーを設け、多くの参加者が足を止めた。
2078_07.jpg 講師書籍紹介
『ルポ 悲しみと希望のウクライナ-難民の現場から』

発行:新日本出版社
2200円+税
[感想文] 国際部市民講演会
ウクライナの人々に共感をよせる
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会場ではウクライナ人アーティストの作品の展示・販売を行った

 果たしてヒトはどれだけ困っている人々に寄り添えるのだろうか? どれだけの日本人が、困っている隣人や他国の人々にあたたかい声をかけることができるのだろうか。丸山さんはポーランドに行って、ポーランドの人たちの他者とのかかわり方に感動を覚え、ポーランドの大学で修士課程を終え、現在は現地の大学で教鞭を執っている。
 ご存知の通りポーランドはウクライナの隣国である。2022年2月にロシアがウクライナ東部に侵略して始まったウクライナ紛争により、西部ウクライナの人々は着の身着のままで隣国ポーランドに避難した。
 そのとき多くのポーランド市民はあたたかく迎え入れた。ルポライターとしても活動している丸山さんも、ポーランドのボランティアの人々とともに、様々な支援活動に参加してきた。紛争は長期化し、難民の避難生活も様変わりし、いじめや様々な問題も起こっている。
 ウクライナでステンドグラス作家として活動していたナタリアや画家のスヴィトラーナもようやく避難先になじんだ。しかし創作活動を続けるためには祖国に戻る必要がある。そのため帰国を決意した。そこには新たな希望が生まれている。
 彼女はそんな現地の情勢を伝えるとともに、日本の人たちに、市民レベルでも、個人レベルでも、ウクライナの人々へのあたたかい気持ちを伝えてほしいと、活動を続けている。
 私たち日本人が、評論家や、傍観者の立場にならずに、当事者のような気持ちを持ち、共感し、忘れないようにすることが最も大切なことであると丸山さんは訴えた。大事なことだと思い、気持ちを新たにすることができた。とても素晴らしい講演だった。

【西宮市 半田 伸夫】

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