2024年9月05日(2079号) ピックアップニュース
保団連第53回夏季セミナー 参加記
全国保険医団体連合会(保団連)は、8月3・4日に東京都内で第53回夏季セミナーを開催。全国の協会・医会から、会場とオンライン合わせて約356人、兵庫協会から16人が参加した。記念講演では、元テレビ朝日社員の玉川徹氏が「日本一有名な平社員の作られ方」と題して講演したほか、四つのテーマに分かれての講座や「患者・国民、医療現場を守る地域医療~地域の医科・歯科診療所・中小病院が果たす役割を考える~」をテーマとしたシンポジウムが開催された。参加記を掲載する。
参加記①
日頃、News以外TVをほとんど見ないが、朝8時からのABCテレビの羽鳥慎一のモーニングショーだけは、必ず視聴するようにしている。今回参加した理由の一つは、その番組のレギュラーコメンテーターである玉川徹氏に直接会って生の声を拝聴できるからで、氏の政治、経済、社会問題に対する対応はいつも正鵠を射ていると考える。しかも氏は市井*しせい*の一会社員であって、名の通った学者ではなく、大学の教授でもないが、国民目線で分かりやすく、納得できる解説をされる。
今回、本人の生い立ちについて、医師になりたかったこと、一年浪人して理学部で「バイオ」の研究をしたかったが、入試の点数が不足して希望していない農学分野に進んだとのこと、見栄を張らず、希望通りの人生を送ることができなかったと述べておられた。しかし淮南子の塞翁が馬の故事の如く、サラリーマンとして成功者である。ABCテレビで高視聴率が得られ、定年退職後フリーとなった現在、運転手付きの送迎車に乗り、会社ではVIP待遇らしい。
会社員は医師の如く自由業ではないが、如何なる場所に配属されても「欠くべからざる存在になれ!」、また「すべての仕事は他人のために何か役に立ち、周囲から求められる」という氏の考え方に因るらしい。
ところで今回、健康保険証をなくしてマイナカードと一体化することに氏が反対している理由について、高齢者や認知症の患者が対応できないので、ETCカードの如く長年かけて徐々に普及させるべきであると述べられた。
氏が頭角を現したのは、東京の公務員官舎の価格などの異常な優遇問題に着眼し問題提起し、国民が注目したことからであった。マイナ保険証への強引な切り替え、原発回帰、防衛費増税等は自民党に献金する大企業に阿諛追従*あゆついしょう*したもので、国民目線とは乖離している。
今後も国民的人気の高い玉川氏に、マスコミを通して社会をよくしてもらうよう尽力してもらいたい。願わくば、国政選挙に出てもらいたいが、政治の世界では一人の意見はなかなか認めてもらえない。
マスコミの方がTVを媒介にして国民を動かす大きな力となる。政党政治家になれば、まともな意見も党の方針によって歪められる。それなら今まで通りTVを通して、国民目線の正論を述べた方が社会正義のためにより有用とのこと。筆者も全く同感である。一陣笠議員よりTVコメンテーターの立場の方が、社会的には「水を得た魚の如し」と筆者は思う。
参加記②
ジェンダー問題を夏季セミナーで学び出してから今回で3回目となりました。一昨年は東大教育学研究科教授の本田由紀先生、去年は東大情報学環・学際情報学府准教授の藤田結子先生の講演を聴講しました。今回の講演は日本貿易振興機構アジア経済研究所の牧野百恵さんの「ジェンダー格差の要因」でした。今回の学びにより、この格差をどのように克服するか、色々とヒントを教えてもらえました。
まず第一に、その格差をなくすためには、まず「3歳までは女性が子どもの世話をすべき」「男性が家族を養うべき」といった社会規範そのものを変えるべきだということです。
これには少し驚きましたが、このような社会規範が緩い北欧においては、高学歴で社会進出している女性の方が子どもを産んでいる事実があるそうです。
第二に「女性は男性に劣る」というような偏見を持たない教師や、モデルとなる活動的で魅力ある女性教師が必要です。このような環境では結果的に女子学生の学力が伸びてきます。実際に、社会、親、教師の思い込みの影響は大きく、それが少ないSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)の分野で優秀な女性も多く、他者との交渉事も得意な女性はいて十分に活躍できているのです。
第三に、これからは社会に進出した先輩女性たちの「ロールモデル」の果たす役割も大きいと考えられます。国連軍縮担当の中満泉さんや、核兵器禁止条約の発効で活躍されたサーロー節子さん、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン元首相然りです。
2年前の本田先生の講演時に印象に残ったのは「男性の働き方を改善しなければ、働く女性も生きにくい」ということです。そんな風に偏見をなくし、社会が変われば男女ともに「より柔軟な働き方」が実現できるのでしょう。
そのためにはまず、ヨーロッパで進められている政治に参加する女性議員の数を法律で保障する「パリテ」や「クオータ制」を取り入れ、根本の政治を変える努力と工夫、そして覚悟が社会全体に必要だと強く感じました。
参加記③
全国的に連日35度超えの猛暑の中、土曜日午前の診療を終えてから東京での夏季セミナーに参加した。
竹田智雄会長のあいさつに続いて井上美佐副会長の基調講演、19時頃から元テレビ朝日社員の玉川徹氏の講演を拝聴。当初のテーマとは異なり、〝日本一有名な平社員の作られ方〟というくだけたテーマで、京都大学農学部に入学したものの希望の学科ではなかったことから、就職先のイメージが持てずモラトリアムとして大学院進学した。その後、学内で偶然出会った昔の同級生がきっかけで、仕事は好きなことをすべしと思いテレビ朝日に入社したと、いきさつを聞く。
視聴率がすべての世界の中でどう生き残るかを考え、組織内の勤務査定や評価が低くても自分の信念を曲げないことも必要で、視聴率を上げるために政治ネタや議員の官舎問題を提起した経験を話された。〝欠くべからざる存在になればいい〟という言葉がモットーであり、若者のテレビ離れに対しての危惧はあるものの、地上波放送の必要性は残るし、マイナ保険証についての報道の必要性にも触れていたことについては評価したい。
翌日の午前は講座2「軍事大国化する日本に未来はあるのか」というテーマで、明海大学経済学部准教授、宮崎礼二氏の講演を聞いた。安倍政権から加速化してきた軍事拡大は岸田政権になり露骨になってきている。22年度から23年度にかけて社会保障費が1.7%の増に対して、防衛関係費は26.4%増となり、軍事対抗を唯一の政策とした場合、戦争リスクを高め富国強兵ならぬ「貧国強兵」化に帰結することのリスクを示し軍事一辺倒ではない政策展望を話された。
〝戦争経験者が権力中枢にいるうちは、日本の平和は大丈夫だが、そうでなくなると危うい〟とかつて言った田中角栄の言葉を思い出した。
午後は地域医療シンポジウムで長友薫輝佛教大学准教授の基調講演と全国の地域医療の現状報告を拝聴した。
かかりつけ医機能の強化、デジタル化の推進の弊害について、政府が進める政策により地域の医療介護提供体制の縮小、都市部への人口集中がさらに進んでいる現状を聞いて、日本の将来に不安を覚えつつ帰郷した。
参加記①
TVコメンテーターこそ国民目線の正論をのべる
監事 永本 浩
日頃、News以外TVをほとんど見ないが、朝8時からのABCテレビの羽鳥慎一のモーニングショーだけは、必ず視聴するようにしている。今回参加した理由の一つは、その番組のレギュラーコメンテーターである玉川徹氏に直接会って生の声を拝聴できるからで、氏の政治、経済、社会問題に対する対応はいつも正鵠を射ていると考える。しかも氏は市井*しせい*の一会社員であって、名の通った学者ではなく、大学の教授でもないが、国民目線で分かりやすく、納得できる解説をされる。
今回、本人の生い立ちについて、医師になりたかったこと、一年浪人して理学部で「バイオ」の研究をしたかったが、入試の点数が不足して希望していない農学分野に進んだとのこと、見栄を張らず、希望通りの人生を送ることができなかったと述べておられた。しかし淮南子の塞翁が馬の故事の如く、サラリーマンとして成功者である。ABCテレビで高視聴率が得られ、定年退職後フリーとなった現在、運転手付きの送迎車に乗り、会社ではVIP待遇らしい。
会社員は医師の如く自由業ではないが、如何なる場所に配属されても「欠くべからざる存在になれ!」、また「すべての仕事は他人のために何か役に立ち、周囲から求められる」という氏の考え方に因るらしい。
ところで今回、健康保険証をなくしてマイナカードと一体化することに氏が反対している理由について、高齢者や認知症の患者が対応できないので、ETCカードの如く長年かけて徐々に普及させるべきであると述べられた。
氏が頭角を現したのは、東京の公務員官舎の価格などの異常な優遇問題に着眼し問題提起し、国民が注目したことからであった。マイナ保険証への強引な切り替え、原発回帰、防衛費増税等は自民党に献金する大企業に阿諛追従*あゆついしょう*したもので、国民目線とは乖離している。
今後も国民的人気の高い玉川氏に、マスコミを通して社会をよくしてもらうよう尽力してもらいたい。願わくば、国政選挙に出てもらいたいが、政治の世界では一人の意見はなかなか認めてもらえない。
マスコミの方がTVを媒介にして国民を動かす大きな力となる。政党政治家になれば、まともな意見も党の方針によって歪められる。それなら今まで通りTVを通して、国民目線の正論を述べた方が社会正義のためにより有用とのこと。筆者も全く同感である。一陣笠議員よりTVコメンテーターの立場の方が、社会的には「水を得た魚の如し」と筆者は思う。
参加記②
政治の力で男女格差をなくす
評議員 松岡 泰夫
ジェンダー問題を夏季セミナーで学び出してから今回で3回目となりました。一昨年は東大教育学研究科教授の本田由紀先生、去年は東大情報学環・学際情報学府准教授の藤田結子先生の講演を聴講しました。今回の講演は日本貿易振興機構アジア経済研究所の牧野百恵さんの「ジェンダー格差の要因」でした。今回の学びにより、この格差をどのように克服するか、色々とヒントを教えてもらえました。
まず第一に、その格差をなくすためには、まず「3歳までは女性が子どもの世話をすべき」「男性が家族を養うべき」といった社会規範そのものを変えるべきだということです。
これには少し驚きましたが、このような社会規範が緩い北欧においては、高学歴で社会進出している女性の方が子どもを産んでいる事実があるそうです。
第二に「女性は男性に劣る」というような偏見を持たない教師や、モデルとなる活動的で魅力ある女性教師が必要です。このような環境では結果的に女子学生の学力が伸びてきます。実際に、社会、親、教師の思い込みの影響は大きく、それが少ないSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)の分野で優秀な女性も多く、他者との交渉事も得意な女性はいて十分に活躍できているのです。
第三に、これからは社会に進出した先輩女性たちの「ロールモデル」の果たす役割も大きいと考えられます。国連軍縮担当の中満泉さんや、核兵器禁止条約の発効で活躍されたサーロー節子さん、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン元首相然りです。
2年前の本田先生の講演時に印象に残ったのは「男性の働き方を改善しなければ、働く女性も生きにくい」ということです。そんな風に偏見をなくし、社会が変われば男女ともに「より柔軟な働き方」が実現できるのでしょう。
そのためにはまず、ヨーロッパで進められている政治に参加する女性議員の数を法律で保障する「パリテ」や「クオータ制」を取り入れ、根本の政治を変える努力と工夫、そして覚悟が社会全体に必要だと強く感じました。
参加記③
地域医療の現状に憂鬱
理事 田渕 光
全国的に連日35度超えの猛暑の中、土曜日午前の診療を終えてから東京での夏季セミナーに参加した。
竹田智雄会長のあいさつに続いて井上美佐副会長の基調講演、19時頃から元テレビ朝日社員の玉川徹氏の講演を拝聴。当初のテーマとは異なり、〝日本一有名な平社員の作られ方〟というくだけたテーマで、京都大学農学部に入学したものの希望の学科ではなかったことから、就職先のイメージが持てずモラトリアムとして大学院進学した。その後、学内で偶然出会った昔の同級生がきっかけで、仕事は好きなことをすべしと思いテレビ朝日に入社したと、いきさつを聞く。
視聴率がすべての世界の中でどう生き残るかを考え、組織内の勤務査定や評価が低くても自分の信念を曲げないことも必要で、視聴率を上げるために政治ネタや議員の官舎問題を提起した経験を話された。〝欠くべからざる存在になればいい〟という言葉がモットーであり、若者のテレビ離れに対しての危惧はあるものの、地上波放送の必要性は残るし、マイナ保険証についての報道の必要性にも触れていたことについては評価したい。
翌日の午前は講座2「軍事大国化する日本に未来はあるのか」というテーマで、明海大学経済学部准教授、宮崎礼二氏の講演を聞いた。安倍政権から加速化してきた軍事拡大は岸田政権になり露骨になってきている。22年度から23年度にかけて社会保障費が1.7%の増に対して、防衛関係費は26.4%増となり、軍事対抗を唯一の政策とした場合、戦争リスクを高め富国強兵ならぬ「貧国強兵」化に帰結することのリスクを示し軍事一辺倒ではない政策展望を話された。
〝戦争経験者が権力中枢にいるうちは、日本の平和は大丈夫だが、そうでなくなると危うい〟とかつて言った田中角栄の言葉を思い出した。
午後は地域医療シンポジウムで長友薫輝佛教大学准教授の基調講演と全国の地域医療の現状報告を拝聴した。
かかりつけ医機能の強化、デジタル化の推進の弊害について、政府が進める政策により地域の医療介護提供体制の縮小、都市部への人口集中がさらに進んでいる現状を聞いて、日本の将来に不安を覚えつつ帰郷した。