2024年9月15日(2080号) ピックアップニュース
[税経部より] 税務調査の心構え
調査は任意 毅然とした対応を 協会税務講師団 中村 明税理士
ルール無視の調査にご注意を
医療機関への税務調査の件数は減少傾向にあります。新型コロナ禍で2~3年調査がなかったため、実地調査の経験がない税務署員も多く、「調査能力が低下している」と語る税理士もいます。納税者が調査手続きに慣れていないのをいいことに、「事前通知なし」で突然訪問するなど、税務調査のルールを定めた「国税通則法」「税務運営方針」に基づかない、知らない調査官が多く、本来は指導も兼ねた調査であるべきですが、実績にこだわる強権的な調査が見受けられます。従来通り、税務調査は任意調査であり、毅然とした対応が必要です。事前通知から当日までの対応で気を付けるべきポイントを解説します。
事前通知への適切な対応を
税務調査は納税者に電話で事前通知されます。まず実地の調査を行う旨を通知し調査日を決めます。その他、調査担当者、場所、目的、対象となる税目、調査の対象の期間・帳簿書類など11項目にわたり通知されます。通知と異なる調査は違法です。協会の事前通知チェックシート(協会事務局にご注文ください)を活用して漏れなく確認し、内容を記録しましょう。協会・保団連では、書面による事前通知を要求していますが、国税局や国税庁は書面での通知を拒否しています。
準備期間が短い場合には、顧問税理士や協会と相談して余裕を持った調査日にしましょう。また調査日は合理的な理由を示せば変更が可能です。なお、税理士に提出する税務代理権限証書には本人への通知が省略されるチェック欄がありますが、通知は本人が受けることが望ましいでしょう。
調査当日には毅然と対応
調査当日は、税務署員には身分証明書の提示を求め、所属や氏名、調査理由、調査期間などを確認しましょう。あくまで税務調査は任意調査です。納税者の同意を得て進めなければなりません。調査時は金庫・机の引き出し・スマホ・私物等を勝手に調べることはできません。例えば「パソコンを見せてほしい」と言われても触らせず、必要な部分のみ印刷して示しましょう。
書類の持ち帰りやコピーを求められても応じる義務はありません。書類を撮影したり、データをUSBメモリなどで持ち帰ろうとすることも必ず断りましょう。
不当な調査をチェックするためにも、メモや録音をとり、内容を確認しましょう。
また、臨場時のやり取りについて国税庁も推奨し「質問応答記録書」の作成協力を求められることがありますが、特に不正などの言質を聞き取り、今後の調査を有利に展開しようとの意図で、法律上の強制力はありません。また訴訟となった場合に税務署側の「証拠資料」となりますので、安易にサイン(押印)はせず、内容を必ず確認し、問題点は指摘することが大事です。
税務署員は調査終了時に、問題点がなければその旨など、必ず調査結果の説明をしなければなりませんので注意して聞きましょう。修正すべき事項は納得できるまで話し合いを持つこと、修正申告の勧奨があっても、安易にサイン(押印)に応じないことが大切です。
カルテ開示には応じない
医師・歯科医師は、医師法・歯科医師法とは別に、刑法等により厳格な守秘義務が課せられています。患者さんの個人情報を含むカルテの開示を求められても応じてはいけません。自費診療収入の額などの会計記録を診療記録であるカルテには記さないように、日常からの注意も徹底しましょう。
「お尋ね」文書にご注意を
税務署は「申告内容のお尋ね」といった行政指導文書を送付して呼び出すなど、納税者との接触を増やしていますが、行政指導は法律上「任意の協力によって」実施するものです。応じないために不利益な取り扱いを行うことは禁止されていますので、安易に回答しないように気をつけましょう。調査の通知の際には協会(電話078-393-1807)や税理士にご相談ください。