兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年9月15日(2080号) ピックアップニュース

2023年国保保険証交付等に関する県内全市町調査結果
2割が滞納 差し押さえ8545件

 協会は、県内の国保の保険料滞納や無保険の現状を明らかにするために調査を実施し、全市町から回答を得た。高すぎる保険料を支払えず滞納する世帯が加入世帯の2割にのぼり、差し押さえ件数が8545件と、この10年で最も多くなったことが分かった。本調査は1988年から行い、32年連続で県内の全自治体から回答を得ている。

保険証未交付9千世帯
 国民皆保険制度の軸を担う市町村国保には、「年齢構成が高く、医療費水準が高い」「高齢者、無職・低所得者が多く、所得水準が低い」構造のため、「保険料負担が重い」「収納率が低い」などの問題が存在する。
 保険証の未交付数(保険証の交付対象世帯総数から保険証交付済み数を除いた数、2023年12月1日時点、一部市町は更新時点)は県全体で9282世帯、未交付率は被保険者世帯比で1.4%(昨年度1.7%)となった。1万世帯近い兵庫県民が手元に保険証がなく、必要な治療を受け難い「無保険」状態となっている現状は、「国民皆保険制度」とは言い難く、早急な改善が必要である。特に、尼崎市で7.0%、西宮市で4.8%と、都市部を中心に、多くの加入者が「無保険」状態に置かれている。
 保険料滞納世帯数(2023年12月1日時点)は12万4179世帯、国保加入世帯の18.3%にのぼった。コロナ禍のなかで独自の保険料軽減制度が設けられたことを受け、滞納世帯は一時減少していたが、再び増加している。
 国による保険料軽減・免除制度を加入世帯の7割にあたる47万3691世帯が受けているという状況であるにも関わらず、それでも高すぎる保険料が支払えず滞納する世帯が増えている。
 滞納世帯への催促について、8市(神戸・尼崎・宝塚・川西・西宮・芦屋・加古川・姫路)が民間委託「している」と回答。内容としては電話催告が多かったが、尼崎市・芦屋市・姫路市は訪問による催告も実施していると回答した。住民の個別事情を把握してのていねいな対応ができているのか、懸念される。
 この滞納期間が1年6カ月を超えた際に行われることがある差し押さえの件数は、2022年度8565件とこの数年で、大幅に増加している(図)。
 コロナ禍や物価高による経済的困窮のなかで滞納世帯が増加し、その世帯に対する差し押さえも増加していることが推測される。
国庫負担の抜本的増額を
 有効期限の短い短期被保険者証の交付数(23年12月1日時点)は、3万2097世帯、4.7%(前年度3万1445世帯、4.5%)となった。医療機関窓口で全額をいったん負担しなければならない資格証明書の22年度発行世帯数は6838世帯、被保険者世帯比で1.0%(21年度発行数6969世帯、1.0%)となった。
 保険料を負担しないという理由で、給付に制限を設ける同制度は、低所得者を中心に受診機会を奪いかねず、社会保障としては本末転倒であり、廃止すべきである。
 また、国保法44条に基づく、医療費窓口負担が減免される制度の2022年度の利用者は6自治体32世帯にとどまっており、制度の周知・活用が求められる。
 これまで各市町は独自で法定外繰り入れを行い、保険料を引き下げてきたが、繰り入れ総額は、年々減少し続け、神戸市など8市町ではゼロとなっている。
 国保の改善には、構造的問題の解決とともに、抜本的な国庫負担増が必要であり、同時に市町には法定外繰り入れの増額が求められる。
「保険証廃止」中止し受療権の保障を
 「保険証廃止」法により、マイナンバーカードの保険証利用登録を行っていない人には「資格確認書」が発行されることとなっている。この発行には当初申請が必要とされていたが、国民の運動により、当面の間、利用登録を行っていない人全員に一律交付される運用となった。
 しかし、これは一時的とされている上、利用登録を行ったがマイナカードを利用していない人には、資格確認書が届かない。
 受療権を保障するため、協会は社会保障推進協議会などとともに、保険証の存続を求めて運動を強めていく。

差し押さえ数(棒グラフ・左軸)と滞納率(折れ線グラフ・右軸)
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