兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年10月05日(2082号) ピックアップニュース

2024年兵庫県知事選挙にあたっての保険医の重点要求(案)
2024年9月14日 兵庫県保険医協会

 兵庫県保険医協会は、9月14日の第1196回理事会で2024年兵庫県知事選挙にあたっての保険医の重点要求(案)を承認した。この要求(案)をもとに候補者と懇談し、支持・推薦を決定する。要求案全文を掲載する。

はじめに
 2021年知事選挙では、それまでの井戸知事の退任により金沢和夫氏や斎藤元彦氏、金田峰生氏ら新人同士が争うものとなった。井戸県政で副知事をつとめた金沢和夫氏は井戸県政の「継承」を掲げたが、県政「刷新」を掲げた斎藤元彦現知事に敗れた。しかし、現斎藤元彦知事が掲げた、県政「刷新」は、国言いなりに病院、保健所、学校の統廃合を推し進めるとともに、老朽化した県庁舎を解体し、職員の出勤を4割に減らすことや、県の様々な事業に指定管理者制度やPFIを積極的に導入するなど、県の役割を縮小したり、県が担っていた役割を民間に売り渡す、極めて新自由主義的な改革である。一方で、井戸県政の下で計画、推進されてきた播磨臨海地域道路に代表される大型公共事業は、全く見直されていない。
 また、西播磨県民局長による「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」と題する文書告発に始まる県政の混乱は、知事が事実調査の前に公開の場で告発者を「嘘八百」「公務員失格」と決めつけるなど、対応の不適切さから、兵庫県政は告発者の自死という最悪の事態をふくむ前代未聞の混乱に陥っている。斎藤知事は、この期に及んでなお「県政を前に進めるのが私の責任」と述べているが、質問にまじめに答えることさえしない記者会見での姿からは、「県政を前に進める」姿勢を感じることはできない。
 我々は、2024年知事選挙を下記の要求実現の絶好の機会として、実現のために奮闘するものである。
1、地域の医療提供体制を充実する
①国の地域医療構想策定ガイドラインに基づき機械的に策定された兵庫県地域医療構想を見直すこと。見直しにあたっては、災害や新興感染症対策を見越して余裕を持った病床数を将来推計に反映させる、病院の統廃合は、地域の住民はもとより地域の医療関係者の意見を十分に反映させる、地域の開業医の高齢化を踏まえ、過度に在宅医療に頼る体制としない、等に十分留意すること。
②厚生労働省に対し、医師臨床研修の募集定員上限の引き上げを強く求めるとともに、研修医の意見を十分に考慮し、地方の中小病院の募集定員を削減しないこと。
③医療機関に対する物価高騰対策として、財政措置をとること。
④地域医療を支えるため診療報酬の引き上げを国に求めること。
⑤今次診療報酬改定で賃上げの対象とならなかった事務職や40歳以上の医師・歯科医師の賃上げのための財政措置をとること。
⑥2024年10月からの長期収載医薬品の選定療養実施の中止を国に求めること。
⑦県立病院は引き続き県立・県営で運営すること。
⑧先端医療開発を理由とした、メディカルツーリズムや混合診療に道を開く施策は行わないこと。
⑨地域別診療報酬導入、実施を行わないこと。
⑩新規開業規制は行わないこと。
⑪北播磨圏域に地域周産期母子医療センターを整備すること。
⑫西播磨準圏域での救急医療体制の確保を行うこと。
⑬丹波医療圏域に救命救急センターを整備すること。
⑭県立病院に歯科・口腔外科を整備すること。
⑮健康保険証の存続を国に求めるとともに、市町に加入者全員に資格確認書を発行させること。
2、医療・福祉制度の拡充
①高齢期移行者医療助成制度を充実させ、高齢者の医療費窓口負担が1割負担となるよう医療保険制度との差額を助成すること。
②母子家庭等医療費助成の所得制限を、児童扶養手当の一部支給の所得制限まで緩和すること。
③入院給食費助成を復活すること。
④こども医療費は、県内市町の努力でその90%が中学3年生まで、65%が高校3年生世代まで自己負担を無料にしている。市町まかせでなく、県の責任で「中3まで無料」を実現し、さらに高校3年生世代まで無料をめざすこと。
⑤福祉医療対象者の薬局・訪問看護ステーションにおける患者負担を廃止すること。
⑥国民健康保険の保険料を引き下げるとともに、市町に不当な差し押さえを行わせないようにすること。
⑦妊産婦健診助成を拡充し、妊産婦医療費助成制度を創設すること。
⑧高齢の軽度難聴者に対する補聴器購入助成制度を創設すること。
⑨外国人急病人未払い医療費補填制度を創設すること。
⑩歯科検診と妊産婦歯科検診、口腔がん検診を、すべての歯科医院で無料で受けられるようにすること。
⑪予防接種事業は原則無料とし、全員が平等に受けられるようにすること。
⑫介護保険制度の保険料・利用料について独自の減免制度をもうけること。
⑬介護従事者の待遇を改善し、人材を確保すること。
⑭生活保護等福祉受給者を監視したり、差別することのないようにすること。
3、開業保険医が安心して診療に専念できるよう
①保険診療に関する監督責任のある県として、次のことに留意すること。審査・指導は「行政手続法」の趣旨にもとづき行わせること。主治医の裁量権を尊重し、医学・医療内容を無視した経済審査や強権的指導・監査を是正すること。事務職員による医療内容の点検関与、レセプト点検の民間委託はやめさせること。
②医療DXを進めるに際して、導入のための費用等の補償を行うこと。
③医療廃棄物処理について公費助成を行うこと。
④県内全自治体に歯科検診・予防活動のセンターとなる口腔衛生センター、障がい児(者)の診療を担う歯科センターを整備すること。
⑤県立の歯科技工士学校を再度整備するとともに、適切な助成等を行い歯科技工士養成に力を入れること。
⑥安心・安全の歯科技工物を県民に供給するため、歯科技工所に対する財政措置をとること。
⑦「歯及び口腔の健康づくり推進条例」について、学校歯科健診で不正咬合など矯正治療が必要と診断された場合、保険が適用されない治療費を県が助成することなど、県が予算措置を十分に行うこと。
4、阪神・淡路大震災復興要求
①被災者生活再建支援法の改正をふまえ、阪神・淡路大震災被災者の暮らし再建・救済のために特例措置を講ずること。
②現段階で返済できない各種震災関連融資の返済を免除すること。
③被災者生活再建支援法の支援限度額引き上げ、半壊・一部損壊世帯・住宅店舗への適用拡大、災害規模による適用条件の廃止を国に求めること。
④民間医療機関の耐震診断、耐震補強に助成すること。
⑤南海トラフ巨大地震に対する防災対策を強めること。
5、不必要な公共事業や環境破壊をやめる
①播磨臨海地域道路など無駄な公共事業への支出を抜本的に見直すこと。
②震災アスベスト被害者に対する検診や補償を充実させるとともに、アスベストを含む建物の解体工事などに対して、厳しく監視すること。
③温室効果ガス削減の取り組みを強化すること。温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電所の新増設は認めないこと。
④PFASについて各河川の調査を行うとともに、血中濃度測定を希望する県民に実施すること。
6、県民のくらしと平和を守る
①非核自治体宣言を行うこと。
②オスプレイを含む米軍機の訓練飛行や京都府北部に設置された米軍のXバンドレーダーの電波により兵庫県北部のドクターヘリ運行に支障をきたさないよう、政府や米軍に申し入れ等を行うなど必要な措置をとること。
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