2024年10月25日(2084号) ピックアップニュース
燭心
奥能登豪雨から1カ月。元日に発生した震災の復旧作業が遅々として進まない中でのたび重なる災害だ。被災した住民の悲嘆は察するに余りある▼地震で自宅を失った人たちが暮らす仮設住宅も浸水した。あろうことか震災仮設住宅の4割以上がハザードマップなどの浸水や土砂災害のリスクがある区域に該当するという。建設に適した土地が少ないというやむを得ない事情もあるだろうが、せめて入居する人たちに事前に知らせておくべきではなかったか。自治体職員に「少しくらい不満があっても被災者は我慢するのが当然」という感覚があったのではないか▼ボランティア元年と言われた阪神・淡路大震災から30年、日本人の災害支援に対する意識は向上したのか。「被災者が困っているから助けてあげる」という思考から抜けきれない国民が少なくない。人権問題を、思いやりや優しさで解決させる道徳教育と無縁ではないだろう▼避難所の構造、運営も世界標準からはほど遠い。月刊保団連6月号の「体育館の雑魚寝にNOを!」と題した巻頭言で、メディア研究所の谷岡理香所長は語る。「当たり前の日常が災害によって損なわれている。そのような状況でも尊厳ある生活を営む権利は守られなければならない。被害者は我慢をし続け災害関連死もやむなしという社会を続けるのか、被災前と同じ暮らしを保障するのが当たり前の社会を目指すのか、私たちは今まさにその選択を迫られている」と。防災省の設置だけでは解決できない。(九)