2024年11月05日(2085号) ピックアップニュース
大澤理事へインタビュー 県知事選挙に挑む
"医療改善には政治変えなければ" 尼崎医療生協病院院長 大澤 芳清理事
コロナ禍の不条理で行政転換の必要性痛感
西山 現役医師として、選挙戦に臨むというのは、大変な決意だったと思います。きっかけは何だったのでしょうか。大澤 医師として、病院長として、この間経験したコロナ禍です。当院でも多くの患者を受け入れましたが、当時は、保健所のスタッフは夜中まで患者さんの対応にあたっていましたし、地域の開業医の先生も明け方まで往診を行っていました。にもかかわらず、介護施設に入所する患者さんらが高齢を理由に高次医療機関へ入院が認められず命を奪われることもありました。
今の医療提供体制では、保健所の職員や開業医、病院のスタッフがどれだけ全力を尽くしても、ひとたびパンデミックが起こると対応しきれないのです。その原因は、国の医療費抑制政策です。提供側の効率だけを考えて、医療提供体制側の平時の余力を奪ってきたことが問題だと思います。兵庫県も国のそうした政策に追随してきました。
西山 コロナ禍後、診療報酬改定もマイナスとなりました。
大澤 はい。コロナ禍で、医療関係者は一人でも多くの患者さんを救おうと全力を尽くしました。国や県も一定の補助金などを出して、それを支えましたが、コロナ禍が過ぎれば、補助金が廃止され、診療報酬は下げられ、さらに物価高、スタッフの賃上げ圧力が加わり、経営は大変厳しくなっています。国だけでなく、県も医療機関の経営を支えるべきです。まずは県民の命と健康を守る医療機関を大事にする県政を実現したい。これが立候補を決意した理由の一つです。
西山 他にはどうでしょうか。
大澤 もう一点は、県による中小病院に対する臨床研修定員の削減です。
今年度は当院も含めて、七つの病院で臨床研修定員がゼロになってしまいました。もともと臨床研修を受け入れるには、指導医の配置など厳しい施設基準をクリアしなければなりません。中小病院にとっては負担になることもありますが、それでも地域で優秀な医師を育てたいという思いで協力をしてきました。
にもかかわらず、国から臨床研修定員が減らされたことを受け、県は中小病院の臨床研修定員を機械的に削減してしまったのです。
西山 こちらも大元には国の医師数を抑制するという政策があります。
大澤 そうです。国はあくまでも医師の偏在が問題とし、医師の絶対数不足には触れません。しかし、日本の人口当たり医師数はOECD38カ国中29位と極めて低い水準でG7中では最小です。兵庫県でも、医師多数区域とされる神戸医療圏でも人口1万人当たり304人程度であり、OECD平均の350人を大きく下回ります。にもかかわらず、国は抜本的な対策を打ちません。
兵庫県も国と全く同じ立場で、県の臨床研修定員が国によって減らされても抗議をせず、大学病院の臨床研修定員の確保と地方への医師派遣機能の維持を優先し、中小病院の臨床研修定員を削減してしまったのです。医師不足の問題でも他の都道府県と力を合わせて、現場の意見を重視し、国に医師の増員を求めていく県政にしたいと思います。
西山 協会でも医療提供体制の充実、それを支える診療報酬の大幅プラス改定、医師の増員を求めています。
病院統廃合は地域の声よく聞いて
聞き手 西山 裕康理事長
大澤 それも大きな問題です。確かに県内でも三次救急を担う医療機関が不足している医療圏もありましたので、病院の統廃合によって、大規模急性期病院を整備する必要性もあるとは思います。
しかし、病床を削減して医療費を抑制したいという国の思惑で進められてはいけない。やはり地域の医療を担う医療関係者や何よりも地域の住民、患者の意見をよく聞いて進めるべきです。
例えば、高機能の病院を整備しても、その後、患者さんを後送する回復期や慢性期、療養病床など、病状にあった機能を担う医療機関を、統合された病院の近辺に整備することも大事だと思います。さらには外来や在宅を担う開業医が必要で、いずれも政策的補助が必要と考えます。
西山 そうですね。協会も、引き続き地域の先生方や患者さんの声を行政に反映させていきたいと思います。
いのちを守るため福祉医療制度を充実
西山 次に福祉医療制度についてはいかがですか。大澤 18歳まで医療費を無償にするとともに高齢者の医療費助成制度も充実させます。
先日の候補者討論会では、清水貴之前参議院議員や稲村和美元尼崎市長は、医療費を無償化すると過剰診療が増えるとして、後ろ向きの姿勢を示しました。しかし、日本の医療費窓口負担の高さを考慮すれば、「過剰医療」は本来の医療需要が顕在化したものと考えるのが普通です。
また、この間高齢者の医療費窓口負担は引き上げられ続けてきましたし、総選挙でも、自民党をはじめ、野党である国民民主党や日本維新の会も高齢者の医療費窓口負担引き上げを公約としました。さらに、立憲民主党は公約では「政府が検討している、後期高齢者医療の窓口負担が3割となる人の対象の見直しは...認めません」としていましたが、野田佳彦代表はテレビで「高齢者の皆さんにご負担をお願いするという抜本改革をしていかなければならない」と述べています。
こうした議論に共通するのは、現役世代の負担軽減のためという理由付けです。高齢者と現役世代の対立を煽るやり方には、大きな問題があります。現役世代の負担を軽減するのであれば、他の先進国のように社会保険料の事業主負担を増やせばいいのです。年金も引き下げが続き、物価が高騰する中、受診抑制で高齢者の健康や命を危険にさらすことのないよう、医療費助成制度を充実させます。
全員に資格確認書 保険証存続求める
西山 保険証の新規発行停止が迫っています。国の政策ではありますが、県としてどう対応すべきだと考えていますか。大澤 はい。まずは、いまだにトラブルが絶えないマイナ保険証を事実上強制すれば、これまで以上に多くの医療機関の窓口でトラブルが増え、患者さんにも迷惑が及びます。そもそも現場からの要望ではないですし、県として、国に保険証存続を求めたいと思います。
さらに、これは保険医協会の厚労省交渉でハッキリしたことですが、改正マイナンバー法の附則には、「資格確認書を保険者が被保険者に職権で付与できる」と明記されています。この附則を活用して、県内の各保険者に、マイナ保険証の有無にかかわらず、全被保険者を対象に資格確認書を交付するべきです。
西山 資格確認書は、現行の保険証と材質やサイズ、記載事項はほぼ同じと言われています。全被保険者に交付されれば、窓口での混乱はかなり少なくなると思います。ぜひ、実現していただきたいと思います。
先生には行政経験がないという声があるかもしれませんが、私はトップに必要なのは、県政の進路を示す大局観、決断力、実行力そして胆力だと思います。
そして、長きにわたる病院や法人のトップとして、低医療費政策の下、コロナ禍も含めて、地域の患者さんの医療ニーズをきちんと満たしながら、病院の様々なスタッフのやる気と知恵を引き出し、チーム医療で病院経営を成り立たせる経営手腕は、他の候補が持つとされる行政経験を上回る実績だと思います。医師の仲間として、先生には県政を担ってもらいたいと思います。
ぜひ、当選めざしてがんばってください。私たちも最大限、応援します。
大澤 ありがとうございます。地域医療改善のため、期待に応えられるよう全力でがんばります。
大澤先生の応援は有志の会で
有志の会「ウィーラブひょうごドクターズ おおさわ芳清を知事にする会」アピール
「医師おおさわ芳清を知事に、県民医療の充実を」にご賛同をお願いします
今号にアピール全文を同封していますので、ぜひご賛同をお願いします。
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