兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年12月05日(2088号) ピックアップニュース

燭心

 〽死んだ男の残したものは、ひとりの妻とひとりの子ども...昔、ベトナム反戦運動でよく口ずさんだ歌である。その作詞者の谷川俊太郎さんが、先日亡くなった。暗くて重い歌詞には批判もあったろうが、反戦の思いを込めた曲は半世紀以上歌い継がれてきた。他にもたくさんの素晴らしい詩を残して下さった▼〽死んだ兵士の残したものは、こわれた銃とゆがんだ地球、他には何も残せなかった、平和ひとつ残せなかった...ベトナム戦争が終わっても、世界に武力紛争は絶えない。今なおウクライナでガザで、多くの人が殺されている。戦争が始まるまでは、ごく普通の暮らしがあったであろうに▼戦争を止めるのは、言論の力、民主主義である。だが、それが揺らぎ始めている。米国の大統領選挙では、ネットで大量のデマ情報を流した陣営が勝利した。わが兵庫県知事選挙も然りである。〝嘘も百回言えば真実になる〟ということなのか? 戦争へ突き進んだ時代の再来にならぬか、いやな予感がする▼〽死んだ彼らの残したものは、生きてる私、生きてるあなた...平和と民主主義を守る責任を負うのは、生きている私たち一人ひとりである。倦まず弛まず、何が真実かを見極める目を持って生きたい。人間の歴史は、日々の些細な積み重ねでできているのだろう。〽死んだ歴史の残したものは、輝く今日と、また来る明日、他には何も残っていない、他には何も残っていない...最後の歌詞の意味が重い。ありがとう、ご冥福をお祈りする(星)
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