2024年12月05日(2088号) ピックアップニュース
県弁護士会と共催で「マイナ保険証」シンポジウム
新国会で保険証廃止食い止めよう!
「監視社会」となる危険性を指摘
西山理事長は、現行の保険証廃止により、患者の受療権が脅かされると警鐘を鳴らした。また、現行保険証の廃止には、多くの市民、医療関係者、介護関係者、保険者が反対していることを様々な調査をもとに示した上で、それでも政府が頑なに保険証廃止を進める背景には、マイナンバーカードのシステム開発で莫大な利益を上げるITゼネコンと政府自民党との癒着があると指摘した。
基調講演を行った斎藤貴男氏は、自身の体験や取材をもとに、すでに日本でも大企業が警察や公安調査庁と連携し、従業員や入社希望者の身辺調査を行っている実態を告発。マイナンバー制度がそうした動きに拍車をかければ、最終的に行き着く先は「監視社会」だと述べ、中国では、道徳心や愛国心が信用スコアリングとして査定されていると「監視社会」の恐ろしい実態を紹介した。
シンポジウムでは、協会顧問弁護士の野田倫子氏がコーディネイターを務めた。バイト先でマイナンバーの提出を求められ困っているとの質問には、坂本団弁護士が、法律上、源泉徴収や保険料徴収時に事業所には従業員のマイナンバーを収集する義務があるが、従業員は提出の義務はなく、その旨を会社に伝えれば問題はないと回答。斎藤氏は、そういう形でマイナンバーカードを示せという同調圧力が非常に危険で、会社や国に従順な社員や国民を選別することにつながると述べた。
今後の展望について質問を受けた西山理事長は、後期高齢者医療制度で、資格確認書がマイナ保険証を持っている被保険者にも一律に交付されるようになったことを運動の成果として報告。引き続き国保などでも自治体に資格確認書の一律交付を求めていくとした。また、立憲民主党が保険証廃止延期法案を提出したことを報告した上で、「総選挙で与党が過半数割れをしたことで国会内の力関係は流動的になっており、法案可決の可能性はある。協会では臨時国会中に国会議員要請を行うので、署名にご協力を」と協力を訴えた。
シンポジウムの開催に先立ち武村義人副理事長があいさつ。開会あいさつと閉会あいさつをそれぞれ、八木和也県弁護士会情報問題対策プロジェクトチーム座長、三宅勇気同会副会長が務めた。
市民シンポジウム「使わなくていい?マイナ保険証」
[感想文] 「監視社会の完成」手遅れになる前に行動を!
評議員 島津 俊二
11月23日に開催された「マイナ保険証」シンポジウム(報道1面)に参加した島津評議員の感想を紹介する。
かねてより問題続出、「マイナ保険証使用」に不安をもつ方々が弁護士会館につどい問題点を共有し、12月2日に新規発行中止となった健康保険証の疑問点をぶつける良い機会となりました。
今シンポジウムはジャーナリストの斎藤貴男氏、当会の西山裕康理事長、大阪弁護士会の坂本団氏によるシンポジウムを中心に、西山理事長がマイナ保険証の噴出している問題点を講演し、斎藤氏がジャーナリストの観点から問題提起されました。
西山理事長はマイナ保険証の問題点を一般の方に理解できるように説明していただき、皆さんの賛同を得ました。そしてデジタル庁が行政指導されたように、同庁並びに前大臣(河野太郎)の「個人情報を扱う庁としての意識の欠如」を強調した講演となりました。
もちろん皆様が不安になっている、12月2日以降の紙の保険証の方々への現在の有効期限内での有効性や資格確認書の発行に関しても説明され、不安なきようにとのアドバイスをされました。
坂本弁護士はマイナンバー成立過程における、過去の国による国民総背番号制の復活過程を説明いただき、日本版グリーンカードから住基ネットと、政府のマイナンバー制度への野望の過程をのぞかせていただきました。
法律家であるため法的根拠を説明されましたが、今次のオン資裁判に関してのコメントはいただけませんでした。注視していることは配布された資料でよくわかりました。
マイナンバーカード情報から得られる個人情報の集約、集積は電子証明書発行番号(ビッグデータ)となり、もはやその番号単体では個人情報ですらなくなり、法的個人情報の保護から外れてしまいます。これでは汎用、悪用の危険性はマイナンバー以上に高いと言えます。そしてもっと怖いのはそのビッグデータから逆に個人データへとたどれるところです。
ジャーナリストの斎藤貴男氏の意見はマイナンバー制度の発案、実行過程が発表されたころ、わたくしがこの危険性を協会の総会、評議員会等々で発信していた内容とほぼ同様であったことは、まったくわが意を得た感がありました。ここからは私の意見ですが、マイナカードやマイナ保険証制度は、私が考えていたスピードよりも速く、医療界の反対が少ないと見越したコロナ禍を利用してそのスピードを加速し、様々なトラブルはものともせず、強引に進められたのです。そしてこうしたことが進められる先は『監視管理社会の完成』です。これは斎藤氏も同意見です。
また斎藤氏いわく、マイナンバー制度はエストニアのマイナンバー制度を模範としているとのことでしたが、何もかも管理されていて嫌じゃないですかとエストニア人に尋ねたところ、旧ソ連領の彼らにとってはKGBよりましとのことでした。笑ってはおれない現実です。
危険が迫っているのに気づかない現実、それを「茄でカエル現象」と言います。皆さんは気づいているはずです。そろそろ行動を起こしませんか、手遅れになる前に...。