兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2024年12月15日(2089号) ピックアップニュース

病院統廃合アンケート結果 会員の診療所に統廃合の評価問う
地域の医療機関の声をよく聞いて

 協会は、地域医療構想に基づき進められている病院の統廃合について、地域の医療機関の意見を聞こうとアンケートに取り組んだ。会員医科・歯科5287の診療所を対象に、10月28日から11月5日の期間で取り組み、311件(回答率=5.9%)の回答を得た。結果を詳報する。

3割以上が地域の病院統廃合を経験
 「地域で病院の統合や病床の集中等はありましたか」との問いに、「あった」と回答した医療機関は109で回答の35.0%に上った(図1)。県内に広く分布する会員医療機関の3分の1以上の医療機関が、病院の統合を経験していることが分かった。
 これは、兵庫県内において、国の策定した地域医療構想策定ガイドラインに基づいて、地域医療構想を策定し、着実に病院統廃合と病床削減を進めている実態を表していると思われる。
 具体的に病院の統合や病床の集中等が行われた病院を聞いたところ、回答が多い順に、加古川中央市民病院、県立はりま姫路総合医療センター、県立尼崎総合医療センター、北播磨総合医療センター、川西市立総合医療センター、甲南医療センター、西宮総合医療センター(仮称)、伊丹市立伊丹総合医療センター(仮称)、朝来医療センター、日高医療センター、県立丹波医療センターと続いた。
 都市部での新病院が上位に名を連ね、今後予定されている同様の病院が続いた。比較的人口の少ない地域で病床削減が行われた病院も名前が挙がった。都市部の大規模な病院はもちろん、県内の大部分の地域の病院の統廃合が、医療提供体制に影響を及ぼしているものと考えられる。
「どちらかと言えば」含め「評価できる」半数超
 回答した医療機関に対し、病院の統合等が行われた病院の評価を聞いたところ、「評価できる」「どちらかと言えば評価できる」との回答は合わせて50.4%に上り、「評価できない」「どちらかと言えば評価できない」の21.5%を上回った(図2・3)。
 また、医科歯科別にこの項目を見てみると、医科に比べ歯科の方が、好意的評価が少なかった(図4)。
機能分化がうまくいっていないとの声も
 評価について具体的な意見を聞いたところ、好意的評価を行った医療機関からは、「標榜科、医師が増えた」「診療レベルが上昇した」「救急患者の受け入れがよくなった」との回答が多く、スケールメリットを活かした診療レベルの向上、患者受け入れのキャパシティ向上が、地域の医療機関から評価を得ているといえる。
 一方、好意的でない評価を行った医療機関からは、「患者が集中し、囲い込み状態となっている」「一次医療に重きを置き、開業医の役割を侵害している」「紹介患者が帰ってこず患者が減った」「統合により病院医師と地域医師の繋がりが粗になり連携が薄くなった」「治っていなくても退院させられる」「患者が集中し待ち時間が長くなった」との回答が多かった。
 病院統廃合の目的の一つとして国や県が挙げる機能分化がうまくいっていないとの評価である。多くの疾患のあらゆる重症度に対応できる大病院ができることで、地域の医療機関の役割までもが奪われ、患者の集中が起きてしまっている事例や、機能分化を厳密にしすぎるあまり、地域の他の医療機関の機能を考慮せずに急性期を経た患者をすぐに転院させてしまうという事例が挙げられた。
 病院の統廃合では、地域の医療機関の機能等をきめ細やかに分析し、地域の患者の疾病や生活の状況に応じた時間的、距離的、アクセスの公平性が確保される体制を構築するとともに、事後の評価が重要である。また、地域医療の充実を最優先事項とし、国の医療費抑制のための病床削減ありきの統廃合は、地域の医療連携を阻む可能性をはらんでいる。
 今回の結果では、好意的な評価が半数をわずかに上回ったが、メリットがデメリットを下回るような政策は看過できない。より良い政策実現のためには、2割の批判的評価にこそ注目すべきである。
 協会では、今後も地域の患者、住民、医療機関の声を聞き、改善すべき点を政策に反映させる活動を強めていく。

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