兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2025年1月25日(2091号) ピックアップニュース

燭心

 日本国政府は旅費を出せなかったのか? 昨年のビッグニュース・ノーベル平和賞のことである。受賞した日本被団協は同式典出席のための旅費捻出にクラウドファンディングを行った。結果目標額1千万円を超え、総額4千473万円となった▼国は何をしていたのか。思い出されるのは2010年、同平和賞は中国の劉暁波氏に贈られた。民主化運動・人権活動家で中国では当時反乱罪で服役中であり、その後2017年に獄中死した。中国政府はノーベル平和賞受賞を全く無視したわけである。形は異なるが、国の姿勢が似通っているよう感じる▼被団協の田中熙巳代表委員のオスロでの言葉を借りる。〝日本国は原爆で亡くなった者に一切補償をしなかった〟端的に今までの国の姿勢を表している。戦争による民間人の被害に対する責任を認めようとしない、その延長上に、被爆者が求め続けている核廃絶に向き合おうとしない現政権の姿勢がある▼式への参加人数が多すぎるなどは、見当違いの意見である。80年という長い間苦しみながら、訴え続けてきた被爆者たちの現状を推し量るべきである。国は出せなかったのではなく、出す気がないのだ。3月の核兵器禁止条約第3回締約国会議に、被爆者の声を無視し、条約の批准どころかオブザーバー参加すらしようとしない▼この姿勢を変えるヒントは昨年の衆議院選挙にある。選挙の結果で政府の姿勢は変えられる。参議院選挙を経て、被爆80年となる今年の夏を大きな転機としよう(蓮)
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