兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2025年2月05日(2092号) ピックアップニュース

燭心

 昨年、神戸市立医療センター中央市民病院が百周年を迎えた。全国で最も古い天保9(1838)年創立の順天堂大学医学部附属順天堂医院や県内でも神戸大学医学部附属病院(前身は1869年開設の神戸病院)、公立豊岡病院(1871年)など150年以上の歴史を持つ病院には遠く及ばない▼しかし1924年市立神戸診療所として長田区に開設された当初から、内科、外科、産婦人科、耳鼻咽喉科とともに歯科が設置されていたことは驚きに値する。全国でも数校の大学病院を除けば百年を超える病院歯科はほとんどないのではないか。53年に中央区布引の地に移転したが、長田区に分院が残り、後に市立西市民病院として発展する。この病院の歯科もまた古い歴史を持つのである▼本院である中央市民病院は、81年には市街地南部の埋め立て地ポートアイランドに居を移し、2011年にはさらに南の地に新築移転した。戦災、震災と2度の大きな災害やコロナ禍というパンデミックを経験した神戸にあってこれら市民病院は大きく傷つきながらも市民に向き合ってきた。しかし市の「救急医療の最後の砦」と称される一方で地方独立行政法人となり医療産業都市の先兵として先端医療に突き進む姿を併せ持つ。百年の歴史を持つ巨大な市民病院は、市街地からの距離以上に市民から遠ざかっていくように見える。震災から30年を迎えた今、アスベストの舞う神戸市内を奔走した日々を思いだしながらOBの一人として憂う日々である(九)
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