兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2025年2月15日(2093号) ピックアップニュース

環境・公害対策部 エネルギー基本計画案と地球温暖化対策計画案へパブリックコメント
脱原発・再エネ中心のエネルギー計画を

 政府は昨年末第7次エネルギー基本計画(案)と地球温暖化対策計画(案)をまとめ、1月下旬までパブリックコメント(意見募集)を実施した。この両計画案は、DXなどの推進などによりエネルギー消費量は増えること、地球温暖化対策を理由として「原発依存度を可能な限り低減する」とする文言をなくし、原子力を最大限に活用する姿勢を明確にしているもの。
 協会は1月26日に森岡芳雄環境・公害対策部長名で両計画に意見を提出した。意見の要旨を掲載する。
DXを、無差別・無分別に導入することは許されない
 両計画集はDXなどの進展によりエネルギー消費量が増えることが懸念されるとしているが、その根拠・推計は希薄である。
 また、政府はデータセンターなどの稼働によるエネルギー消費の増大を喧伝しているが、それこそ、活用分野の制限とマイクロデータ回線への光回線の導入などの技術革新に努め、エネルギー消費量を最大限抑制すべきである。
「原発依存度の低減」を削除せず、維持すべき
 2011年3月11日、東京電力福島第一原発事故が起き、原子力発電の深刻で甚大な被害をもたらすリスクは明らかである。原発事故から14年近く経過してもなお、福島第一原発事故の真相は、解明されていない。多くの山野が除染されず放置され、原子力非常事態制限はなお、解除されておらず、原子炉格納容器内から取り出せたデブリは、微量でしかない。ALPS汚染処理水は、微量ではあるものの、幾多の毒性の強い放射性物質を含みながら、延々と垂れ流され続け、希釈を理由に安全と称しているが、地球環境に蓄積し、汚染し続けていることは自明である。被害に対する補償や生活環境の安全性を回復する問題、使用済み燃料(核廃棄物の最終処分)の問題、廃炉の目途さえついていない。
 原発の危険性は高まったと言え、その評価を新たに加えるべきである。原発を発電時の温室効果ガス排出量の比較から『クリーンエネルギー』と呼ぶなどといったことは、決して許されるべきものではない。ミサイルどころか、ドローン数十機や、サイバーテロによって、簡単に日本の原発は、破壊できるであろう。「安全性の確保を最優先とし、『安全神話』に陥って悲惨な事態を防ぐことができなかったという反省を一時たりとも忘れてはならない。」というのであれば、原発は廃止・廃炉しかない。脱原発を前提としたエネルギー計画を立てるべきで、原発を電源構成に加えることは不可能である。
核燃料サイクルの推進政策をやめるべき
 使用済み核燃料の再処理、プルサーマル「計画」は現在も技術の確立の見通しもたたない状態である。プルサーマルは、現在稼働中の原発でプルトニウムを燃焼する方式で、原発の危険性はさらに増大することは必至である。現在までに安全性の確立がされず、リスクの高い再処理やプルサーマル等に取り組むことは不可能である。
石炭火力、化石燃料から2030年までに脱却を
 計画案では、「非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に推進していくことが喫緊の課題である」としている。気候危機を止めるために必要な「化石燃料からの脱却」が国際会議でも合意されたが、日本は水素や効率の悪いアンモニア混焼、不安定・不確実なCO◆2◆を改修して貯留する「CCS」などの排出削減対策を唱え、石炭火力発電、ガス火力発電を使い続けようとしている。
 化石燃料を毎年数十兆円もかけて輸入するのではなく、再エネや省エネに投資して、エネルギー自給率を高めるべきである。
再生エネルギーの最大限利用と脱原発
 「地球温暖化対策計画案」では世界全体での1.5度目標実現に向け、日本も1.5度目標に整合的で野心的な目標・経路を設定する、2030年度46%削減(さらに50%の高みに向けて挑戦を続けること)2050年ネットゼロを目指すと示しているが、エネルギーの安定供給を実現するために、再生エネルギーの最大限利用と脱原発こそがあるべき方向である。
 化石燃料の価格は乱高下しながら上昇し続ける中、太陽光や風力などの自然エネルギーの発電コストは化石燃料を確実に下回っている。世界各国では、この10年間で自然エネルギーの飛躍的導入が進み、2023年の太陽光や風力発電の年間導入量は過去最高の500GWに達した。
 地球の気温上昇を1.5度に抑えるために、再生可能エネルギーを3倍に拡大する計画を策定するべき。
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