2025年3月25日(2097号) ピックアップニュース
解説 今日の歯科医療をめぐる情勢と「保険でより良い」署名の意義(上)
歯科医療を巡る厳しい現況~歯科医療提供体制の困難~
歯科部会は現在、①窓口負担の引き下げ、②保険適用範囲の拡大、③国の歯科予算の大幅拡大を要求項目とする「保険でより良い歯科医療を求める」請願署名に取り組んでいる(6月下旬まで開催される通常国会に提出予定)。
本署名の意義と歯科医療を巡る情勢について2回にわたって解説する。
今日の歯科医療をめぐる状況は主に、①歯科医療機関の経営困難、②歯科技工所の経営困難、③歯科衛生士不足の三つにより、国民への歯科医療の提供体制が危機に瀕している。以下に個別に解説する。
①歯科医療機関の経営困難
厚労省の2024年の医療施設(静態・動態)調査の結果、歯科診療所は6万6818施設で、前年より937施設減少した。
個人立歯科診療所の損益収支額をみると、1981年を100とした場合、91年89,2001年80,11年57,21年61,22年59と実質の損益差額は、40ポイントも低下している(図1・2023年医療経済実態調査、日本歯科医師会12/1)。
また、厚労省が10人以上の事業所についてまとめている「賃金構造基本統計調査」(2023年版)によると、歯科医師の平均年収は約720万円であり、1200万円をゆうに超える医師とは大きく乖離がある。
②歯科技工所の経営困難
詰め物や被せ物、入れ歯などの補綴物の製作を担うのが歯科技工士であるが、「7:3」の大臣告示(歯科技工士の技術料が7割、歯科医師の管理料が3割とする、88年に出された厚労省の大臣告示)さえ守られず、低技工料金にあえぐ歯科技工所は長時間過密労働を強いられ、早期離職や歯科技工士養成学校の定員割れが進み、業界そのものの高齢化・縮小を招いている。
2016年に全国で3万4640人いた技工士数が来年26年には2万8874人まで激減するという推計(図2・2019年厚労科研論文)もあり、〝10年以内には歯科技工の担い手がいなくなる〟とする声もある。
③歯科衛生士不足
歯科診療所の歯科衛生士の平均給与額は一般病院看護補助職員より低い実態がある(図3・2023年医療経済実態調査、日本歯科医師会12/1)。口腔ケアの重要性が高まり、歯周病の管理などの歯科衛生士の果たす役割が高まっている。しかし、歯科医療機関における歯科衛生士の雇用は進まず慢性的な不足状況が続いている。
また、歯科衛生士の雇用促進や待遇改善のためには、やはり「歯科医療費の総枠拡大」が不可欠だ。
歯科医療費が公的医療費の総体に占める割合はわずか7%に過ぎない。ここを大幅に変えていく署名の意義と患者・国民の声を次回に詳述する。
※署名用紙や署名付きポケットティッシュなどグッズのご注文は、電話078-393-1809まで
本署名の意義と歯科医療を巡る情勢について2回にわたって解説する。
今日の歯科医療をめぐる状況は主に、①歯科医療機関の経営困難、②歯科技工所の経営困難、③歯科衛生士不足の三つにより、国民への歯科医療の提供体制が危機に瀕している。以下に個別に解説する。
①歯科医療機関の経営困難
厚労省の2024年の医療施設(静態・動態)調査の結果、歯科診療所は6万6818施設で、前年より937施設減少した。
個人立歯科診療所の損益収支額をみると、1981年を100とした場合、91年89,2001年80,11年57,21年61,22年59と実質の損益差額は、40ポイントも低下している(図1・2023年医療経済実態調査、日本歯科医師会12/1)。
また、厚労省が10人以上の事業所についてまとめている「賃金構造基本統計調査」(2023年版)によると、歯科医師の平均年収は約720万円であり、1200万円をゆうに超える医師とは大きく乖離がある。
②歯科技工所の経営困難
詰め物や被せ物、入れ歯などの補綴物の製作を担うのが歯科技工士であるが、「7:3」の大臣告示(歯科技工士の技術料が7割、歯科医師の管理料が3割とする、88年に出された厚労省の大臣告示)さえ守られず、低技工料金にあえぐ歯科技工所は長時間過密労働を強いられ、早期離職や歯科技工士養成学校の定員割れが進み、業界そのものの高齢化・縮小を招いている。
2016年に全国で3万4640人いた技工士数が来年26年には2万8874人まで激減するという推計(図2・2019年厚労科研論文)もあり、〝10年以内には歯科技工の担い手がいなくなる〟とする声もある。
③歯科衛生士不足
歯科診療所の歯科衛生士の平均給与額は一般病院看護補助職員より低い実態がある(図3・2023年医療経済実態調査、日本歯科医師会12/1)。口腔ケアの重要性が高まり、歯周病の管理などの歯科衛生士の果たす役割が高まっている。しかし、歯科医療機関における歯科衛生士の雇用は進まず慢性的な不足状況が続いている。
図1 個人立歯科診療所の損益差額と消費者物価指数の経年推移
図2 年齢階級別にみた就業歯科技工士の推移と2026年推計について
図3 歯科診療所の歯科衛生士の平均給与額は一般病院看護補助職員よりも低い
歯科医療費の総枠拡大を
これら「歯科医療提供体制の困難の解決」には「歯科医療費の総枠拡大」が欠かせない。歯科医院が地域医療で役割を果たすためには経済問題の解決が喫緊の課題であり、歯科技工所にとって適正な歯科技工料金にするためには、実効性のある取引ルールの確立と保険点数のアップが不可欠である。また、歯科衛生士の雇用促進や待遇改善のためには、やはり「歯科医療費の総枠拡大」が不可欠だ。
歯科医療費が公的医療費の総体に占める割合はわずか7%に過ぎない。ここを大幅に変えていく署名の意義と患者・国民の声を次回に詳述する。
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