兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2025年4月05日(2098号) ピックアップニュース

第37回地域医療を考える懇談会in但馬を開催
但馬の医療 病診連携強化と医療費総枠拡大を

2098_08.jpg 2098_09.jpg 2098_10.jpg

但馬地域の医療提供の実態を語った那須先生(上)・谷垣先生(中)・黒瀬先生(下)

 協会地域医療部と但馬支部は3月23日、豊岡市民プラザで第37回地域医療を考える懇談会「但馬地域における医療供給体制の現状とこれから~人口減少社会における病診連携のあり方を考える~」を開催。地域の病院、診療所などから医師・歯科医師、スタッフ、市民ら45人が参加した。報告者からは、但馬の医療供給体制の現状や、背景にある医療政策の問題点などが指摘され、医療費拡大を求める取り組みの継続を確認しあった。

 懇談会では、谷垣正人先生(豊岡市・谷垣医院、但馬支部長)が「豊岡市の高齢者入院事情を考える」をテーマに、黒瀬博計先生(朝来市・そよかぜ診療所、但馬支部幹事)が「但馬地域の在宅医療の実践」をテーマに、那須通寛先生(公立豊岡病院副院長)が「地域包括医療における豊岡病院の現状」をテーマにそれぞれ話題提供。
 谷垣先生は、兵庫県内の後期高齢者の市町別入院率調査結果を示しながら「豊岡市の高齢者の入院受診率は、県平均や近隣の養父市・朝来市と比べても極めて低い」と指摘。「全国の中規模都市で豊岡市の在宅看取り率は25.6%と最も高く、『市の在宅医療が進んでいるから』との報道もあったが、『在宅死』が多いのは実際は高齢者がターミナル期でも入院しづらいからでは」と問題提起した。
 黒瀬先生は自身の法人傘下で医師3人とコメディカルで連携し在宅医療を担っている現状を紹介しながら、「特に地方において在宅医療を広げていくためには病診連携の強化と全体のコーディネートが肝要。〝地域全体で在宅医療を育む〟取り組みが必須」と強調。「在宅医療を広げることで病床確保にもつながる」とした。
 那須先生は地域医療構想の推移を振り返りながら「医療費削減、人口減少によって但馬地域の医療機関はこのままではお互いがジリ貧になる。当院でも急性期以外の高齢者の入院増により平均在院日数の確保が困難で、急性期を名乗るのもギリギリの状態。マンパワー不足の中、同じ医療圏内で急性期・回復期・慢性期の役割分担が必要。病診連携や地域のACP教育も進める必要がある」とした。
 参加者からは「病院・診療所や介護事業所などが参加して地域で協議する場が必要と思った。今回の懇談会が今後の地域連携のきっかけになれば」「厚労省が定める二次医療圏にとらわれず、京都府北部も含めた医療供給体制の見直しが急務。政府の地域医療構想を現場の実情に即したものに変え、医療費総枠拡大を実現するためにも今日の議論を広めていくべきでは」などの発言が出された。
 座長は藤井高雄先生(豊岡市・ろっぽう診療所、但馬支部副支部長)が務めた。
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方