2016年3月18日
兵庫県保険医協会
研究部長 清水映二
政府は今次改定について、本体・薬科・材料費で差し引き0.84%のマイナス改定とすることを決定している(前回改定と同様「市場拡大再算定による薬価見直し」マイナス0.19%を改定率に含めると、1.03%のマイナス)。さらに、改定率から外された薬価引き下げ分なども含めると、実質的には1.43%(国費ベースで1495億円)のマイナス改定となる。
これまでの低医療費政策によって、多くの医療機関が厳しい経営を迫られている。地域医療の再生のためには、マイナス改定ではなく、初・再診料をはじめとした診療報酬の抜本的引き上げこそが必要不可欠だ。
2月の中医協答申を見ると、引き続き入院医療の絞り込みと在宅医療への誘導が顕著となっている。
外来では、「医療機能の分化・強化」「かかりつけ医機能の評価」が強調された。地域包括診療料の基準が緩和されるとともに、新たに「認知症地域包括診療料」や「小児かかりつけ診療料」が新設されるなど、人頭払いにつながる恐れのある包括点数が拡大された。
また、紹介状なしで500床以上の病院などを受診した場合の定額負担(初診5千円以上、再診2500円以上)も義務化された。さらなる受診抑制が懸念される。
在宅医療では、在宅時医学総合管理料(在医総管)等について、患者の「状態」「居住場所」「単一建物内での訪問診療人数」「訪問診療の回数」により点数が細分化された。前回も同管理料の改定で在宅医療現場に混乱がもたらされたが、今回待っていたのは点数区分のいっそうの複雑化であり、「重症」でない患者やサービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム入居患者等の点数引き下げだった。
入院では、急性期医療の絞り込みと、早期退院への誘導・圧力がいっそう顕著になった。7対1一般病棟について、医療必要度の高い患者割合や在宅復帰率など、さらなる要件厳格化が盛り込まれた。療養病棟においても、医療必要度の高い患者の受け入れを迫られる内容となっている。
回復期リハビリテーション病棟に対しては、アウトカム評価が新たに導入された。同病棟入院中患者のリハビリの「実績」が「一定の水準」に達しない医療機関は、同病棟でのリハビリが制限される。
要介護者への維持期リハビリの介護保険への移行期限は2年間延長されたものの、全体として医療リハビリの縮小と介護リハビリへの移行がさらに進められている。
処方・調剤分野では、一度に70枚以上の湿布薬を処方することを制限した。事実上の「保険外し」であり、その他の市販品類似薬などへの拡大も懸念される。後発医薬品の使用促進も、より強化された。調剤薬局では、ハードルの高い「かかりつけ薬剤師指導料」が新設される一方、それ以外の調剤基本料を減額するなど、地域の調剤を担ってきた中小薬局への影響が懸念される。
最後に、協会・保団連が要求してきた内容が実現したものもある。
在宅自己注射指導管理料は、複数医療機関での異なる疾患に対する指導管理についても、それぞれで算定が可能になった。「月27回以下の場合」の点数は、統合され引き上げられた。逆に「月28回以上の場合」の点数は引き下げられ、課題が残る。
入院中の患者の他医療機関受診時の入院料減算については、控除率が緩和された。入院料減算と外来算定制限の完全撤廃に引き続き取り組みたい。
協会は、政府に対して今次改定内容の不合理是正を求めるとともに、今後も診療報酬の引き上げと患者負担軽減の運動に継続して取り組んでいく。