2016年3月18日
兵庫県保険医協会
歯科部会長 吉岡正雄
今次診療報酬改定は、30年以上続く歯科医療費抑制策のもとでの歯科医療機関の経営改善にほど遠いものである。歯科医療危機をくいとめ、良質な歯科医療を国民に提供できるよう、歯科医療費の総枠拡大と基礎的技術料の大幅な引き上げをあらためて求めるものである。また、協会・保団連がこの間取り組んできた歯科技工問題については、有床義歯などの技術料や歯科技工加算がわずかに引き上げられたものの、抜本的解決には到底至っていない。
今回導入されたかかりつけ歯科医機能の評価は、エナメル質初期う蝕管理加算など、多くの歯科医療機関で提供できる処置内容を「かかりつけ歯科医機能」として包括点数化し、一物二価を持ち込むものである。わざわざ高いハードルの施設基準を設けて歯科医療機関を選別化する必要はなく、予防歯科を推進するには、日々身近なかかりつけ歯科として診療している圧倒的多数の歯科医療機関が算定できるよう、施設基準をなくすべきである。
新たに設けられた在宅医療を専門に行う医療機関の開設要件に「地域歯科医師会からの協力の同意」との文言があるが、すべての保険医療機関が地域医療を担っており、特定の団体の協力の同意を開設要件とすることは不要と考える。
一方、歯科医師の要求が反映され、一部改善されたものもある。
歯管の文書提供の加算化、レジン前装金属冠の第一小臼歯への適用、周術期口腔機能管理や栄養サポートチームなど医科歯科連携への評価、歯科訪問診療1における時間要件の緩和、同居する同一世帯の複数の患者を診療した場合の評価などである。歯冠補綴時色調採得検査、有床義歯咀嚼機能検査、舌圧検査などは高額な医療機器を装備しなければならない点はあるものの、新たに保険収載された。
協会・保団連が「保険でより良い歯科医療」の実現を求める署名運動、診療報酬の不合理是正や抜本改善を求めた厚労省交渉や国会要請行動を積み重ねてきた結果であり、運動の前進として評価できる。
協会は、窓口負担軽減・保険範囲の拡大・診療報酬の改善へ、国民とともに「保険でより良い歯科医療」を求める運動を引き続き強くすすめていくものである。