2005年1月
【金土日】痴呆の前ぶれ
痴呆は大きく脳血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆に分けられます。
脳血管性痴呆などでは、脳梗塞を起こした後すぐか、あるいは、しばらく時間が経過してから、痴呆症状が出現することがあります。これに対してアルツハイマー型痴呆の場合はゆっくりと進行します。初期ではもの忘れが見られるようになります。とはいえ、進行がゆっくりであるため正常な老化によるもの忘れとの区別がつかず、見過ごされがちです。実際、痴呆症と診断される6~7年前から、色々な初期症状が始まることが多いのです。
痴呆の初期症状とは、車の運転やお金の計算などは出来るのに、少し前の事を忘れるのが特徴です。すなわち、その日の出来事、会話の内容などを忘れるなど、記憶障害がみられます。このもの忘れは初期段階では本人も自覚しています。
記憶障害以外でも、次に述べる症状が認められれば、痴呆を疑うべきです。自分が言おうとしている単語が出なくなる。感情が不安定で、突然泣いたり、笑ったり、怒ったりする。好奇心や興味がなくなる。何度も行っている場所でも迷子になる。判断力が劣ってくる。おしゃれをしなくなる。身だしなみに気を使わなくなる、などです。
痴呆症の初期段階で注意を要するのは、病識があるということです。病識とは、自分はもの忘れをよくするようになったと自覚することです。この様な人は、表面上は愛想もよく、痴呆症ではなく、一時的な記憶障害などではないかと迷わされることがよく見られます。
初期の痴呆症の患者は自分自身が痴呆症ではないかと疑いを持った時は、少しでも隠そうとします。家族のいない所で記憶練習をしたり、トイレにまっすぐ歩く練習をしたりして、家族に自分は普通で健康であることを示そうとします。家族は心配しながらも、一方で痴呆症でないことを望むでしょう。それで家族は「やはりなんでもないんだ」と疑いを消そうとします。これは一番危険な考えであり、疑いが発生した時は、自分で判断しないで、もの忘れ外来などの専門の医師による正しい診断を受けてください。