2006年4月
【水曜】 脂肪性肝炎
肥満している方に脂肪肝が多いのはみなさんよくご存知でしょう。最近では食生活が豊かになり、カロリーオーバーになりやすく、そのために成人の10%程度の方に脂肪肝が見られるようになっています。いままで脂肪肝は、GOT、GPTなど肝臓の検査の異常が軽く、あまり進行しない病気のように錯覚されてきましたが、そうではありません。カロリーオーバーの状態を放置していると高脂血症、糖尿病、心臓や脳の血管障害などといった、いわゆる生活習慣病が増えてきます。合併する糖尿病などの治療が不十分だと脂肪肝から脂肪性肝炎へと進行することがあります。そのことを詳しくお話ししましょう。
食事で過剰に吸収された栄養分を肝臓が処理しきれないと、肝臓の細胞の中にたまり肝臓は腫れて大きくなります。これが脂肪肝です。この状態に様々な障害因子が加わると肝臓の細胞は壊され繊維に置き換えられ、肝臓は少しずつ固くなっていきます。ウイルス肝炎ほど急激ではありませんが、ゆっくり進行して肝硬変に近づいていきます。この一連の変化を示すのが「脂肪性肝炎」です。
超音波検査で経過を追うと、初期の「脂肪性肝炎」では脂肪の多さから肝臓が腫れて輝いて見えますが、次第に脂肪を含んだ細胞が少なくなり、脂肪の輝きは薄れ、腫れがとれて肝硬変になっていきます。
「脂肪性肝炎」の原因の多くはアルコールの過剰摂取ですが、非アルコール性の脂肪性肝炎(NASH(ナッシュ))でも類似したことが起こります。
「脂肪性肝炎」の治療は、脂肪の代謝を改善する薬が試されることもありますが、まだ有効な薬剤はありませんので、食事でのカロリー制限や適当な運動をするといったような肥満や高脂血症への対策、あるいは糖尿病のコントロールをしっかりすることが肝心です。
自覚症状ではこれといったはっきりしたものはないので、脂肪肝の時期から脂肪性肝炎や肝硬変にならないように注意しましょう。また頻度は低いのですが、肝癌が発生することもありますので油断できません。肥満に気づいたら高脂血症や糖尿病などの生活習慣病と共に、肝臓病の専門医にもチェックしてもらうことをお薦めします。