2006年11月
【水曜】 椎間板ヘルニア
背骨の骨と骨の間には椎間板があります。その椎間板の中心には少し軟らかい髄核という核があり、そのまわりに線維状の軟骨があります。年齢とともに椎間板は弾力が無くなり、この線維状の軟骨に亀裂が生じます。この亀裂から髄核が椎間板を盛り上がらせたり、外に飛び出したりして、後ろにある脊髄や脊髄から出ている神経を圧迫した状態が椎間板ヘルニアです。頸の脊椎や胸の脊椎にも起こりますが、腰の脊椎の発生が最も多くみられます。症状は腰では腰痛と片側の足の痛み、しびれ感、筋力低下が多くみられます。頸では頸の痛みと片側の腕の痛み、しびれ感、筋力低下です。
このようにヘルニアの発生部位によって痛みとしびれが異なります。症状所見から診断はほぼ可能ですが、確定診断またヘルニアの部位を決めるために単純レントゲン撮影やMRI検査などを行います。特にMRI検査は身体に害がなく有用です。
治療にはまず安静が必要です。そして、痛み止めや筋肉をやわらげる薬、湿布剤などの投与を行います。また硬膜外ブロックという注射も有効です。痛みが軽くなり慢性期になったら、脊柱を引っ張り伸ばす牽引療法、温熱療法、腰痛体操などの運動療法を行います。多くの患者さんはこれらの保存療法で治り、手術を必要としません。しかし、3ヵ月以上保存療法を行っても症状の改善がなく、かつ確実なヘルニアが証明されて症状が持続し、通常の活動ができない場合は手術を考える必要があります。明らかな脚の運動麻痺、排尿・排便の障害が出現している場合は緊急手術が必要です。
手術療法は基本的に神経を圧迫している髄核をとる手術です。以前は部分的に脊椎を削り、核をとる手術がほとんどでしたが、顕微鏡を使って行うマイクロ手術が普及してきました。最近では小さな傷口で行う手術やレーザーを用いた手術なども行われていますが、すべての方に適応されるわけではありません。整形外科医に相談の上、場合によっては、脊椎脊髄病専門医を紹介してもらいましょう。