2007年7月
【金土日】社会不安障害
人前で話をする時に緊張し、言いたいことが言えない。初対面の人に何を話したらよいのか分らない。目上の人の前に出たとたん震えて話せない。皆さんも多かれ少なかれこんな経験をなさったことがあるのではないでしょうか。
人前で話をする時、初対面の人と接する時などの緊張は「社会不安」と呼ばれます。この不安が病的に強くなり、日常生活で支障が出る状態になると社会不安障害(略語:SAD)と呼ばれる病気と診断されます。社会不安障害の患者さんの性格特徴は、①劣等感が強い、②自分に自信が持てない、③人前で恥をかくのではないか、変わった人と思われるのではないかと強く心配する、④他人の評価に敏感である、などが挙げられます。その性格特徴から、強い不安を抱き、それを他の人に気づかれまいとして、不安を起こす状況を避けようとします。程度の強い場合は「引きこもり」や「ニート」のように社会生活から逃げてしまうこともあります。
社会不安障害は、全人口の約10~15%の人が罹患しているという報告もあり、まれな病気ではないようです。発病年齢の平均は15歳前後で、不安を持つ障害の中で最も発病年齢が低いものと考えられています。社会不安障害の分類は、3つのタイプに分けられます。①全般型:ほとんど全ての社会生活場面において「強い不安」を感じる、②非全般型:いくつかの社会生活場面において「強い不安」を感じる、③限局型:1つだけの社会生活場面において「強い不安」を感じるという3つです。このうち①の全般型の患者の原因は遺伝的要因が強く、発病年齢が低い傾向にあると言われています。
日本では、社会不安障害という病気については、あまり一般に知られておらず、その症状の原因を自分の性格と思って、治療を受けていない方が多いようです。抗うつ剤や抗不安剤、例えばSSRIと呼ばれる薬や、精神療法、例えば森田療法や認知行動療法などが有効とされています。人前であがって日常生活で困る方は、専門医を受診されることをお奨めします。