2007年11月
【木曜】 妊娠と痔
女性は、妊娠・出産のため痔になることが多いものです。妊娠は、特にイボ痔・切れ痔を悪化させます。そのため、適切な治療を妊娠前に十分受けておきましょう。
切れ痔は、硬い便によって、肛門の出口に近い部分が裂ける、いわば肛門のケガです。排便の時、または排便の後も痛みが続きます。切れ痔の治療で大切なことは、硬い便をしないことです。
一方、イボ痔は、肛門部にある静脈のコブがトイレで長時間いきむことで脱出・うっ血を起こした状態です。症状は、出血・脱出・疼痛・違和感・かゆみなどです。イボ痔を長い間放置しておくと歩いていても脱出し、やがて便失禁を起こすようになります。
女性が妊娠すると便秘に傾きやすく、トイレで長時間いきむようになりイボ痔が悪化しやすくなります。また、便秘によって硬い便を無理に押し出すため切れ痔にもなりやすくなります。さらに、妊娠によって子宮が大きくなって腹圧が大きくなります。肛門部のうっ血が強くなります。そのことが、またイボ痔を悪化させるという悪循環を繰り返します。
ところで、妊娠中の痔で問題になるのが、イボ痔が脱出したまま戻らなくなる嵌頓痔核(かんとんじかく)と言われるもので、たいへん痛いものです。
こんな痔でも妊娠中は、なるべく手術は避けてお薬で様子をみましょう。お風呂によく入りお尻を暖めて清潔にすることが大切です。便秘がひどい時は、主治医の先生と相談して下剤を処方してもらいましょう。また、痔の症状が強い時は、我慢せず座薬を積極的に使うようにしましょう。妊娠3カ月を過ぎていれば、痛み止めの座薬以外ならば使用しても問題はありません。
出産が終わり、お子さんの手が少し離れた頃に、肛門科の医師の診察を受けてください。早期に治療を行うことで快適な排便が約束されます。