2007年12月
【金土日】もの忘れは認知症の始まりか?
「もの忘れ」が目立つ老人をみると、「ボケちゃって…」と言ったりしますが、それが痴呆かどうかの判断は慎重を要します。年をとると、健康な老人でも「もの忘れ」が起こります。ある意味人間はものを忘れることによって、人生をまっとうすることができるといっても過言ではありません。
人は毎日の睡眠によって、脳に記録された記憶のうち不要なものは入れ替えられ、日常生活上大切なものだけが記憶されるようになっています。特に人の名前などは忘れやすくなりますが、安易に「ボケが始まっている」などと言わないことが大切です。
健康な老人の「もの忘れ」は脳の自然な老化現象によるもので、特徴は「ど忘れ、物の置き忘れ、勘違い」などです。「忘れてしまった!」と言う自覚を本人が持っており、その前後のことを話したりすると思い出すことができます。日常生活に問題が起こるほど進行することはありません。
これとは違い老人性痴呆は、脳細胞の病気が原因で次第に進行し、「我を忘れ」、そして自覚も乏しくなります。つまり自分のいる場所、食事をしたことを忘れるなど自分が行った行動自体を忘れ、判断能力は低下してきます。
一般的に痴呆が進むと、会話の内容が乏しくなったり、社会的な出来事への興味や関心が低下します。時には「通帳や印鑑を誰かが盗んだ」という被害妄想を持ったりします。日常生活に混乱が生じて介助が必要な状態も起こります。この場合の対処の仕方は、叱るのではなく、納得させることが大切です。また相手の注意をひくときは、2つ以上のことを一緒に言うのではなく、1つづつ伝えることも大切です。相手を敬い、その人のペースに合わせた対応を心がけてください。
このように、通常の「もの忘れ」と老人性痴呆の「もの忘れ」は異なった状態であり、「もの忘れ」が老人性痴呆の初期症状とは断定できません。しかし、「もの忘れ」が急に起こったり、進み方が早いように感じたら、適切な検査と診断を受けるために、主治医に早めに相談して下さい。