2008年3月
【金土日】多重人格(解離性同一性障害)
最近「多重人格」という言葉を耳にすることが多くなってきました。本日はそのことについてお話します。
一般に言われる「多重人格」は、正式には「解離性同一性障害」と呼ばれるもので、広く「解離障害」に含まれます。「解離」とは、普通の精神状態がつながりを欠き、一時的にとんでもない行動に走ってしまうことを意味しています。
例えば本人が知らない間に情緒不安定となり、手首を切っていたり、薬を一気にたくさん飲んでしまったり、衝動的・暴力的となって、周囲との摩擦を引き起こしたりすることがあります。この事態を本人は覚えておらず、同じことを何度も繰り返すことがあります。
この解離という現象の中で複数の人格が現われ、この交代した人格が本人の行動を一時的に支配します。
現在、各国共通で用いられる診断基準では、次の3つの事柄が定められています。
第1は、二つ以上の、はっきりと他と区別される人格があること。
第2は、二つ以上の独立した人格が、一時的に繰り返し、本人の行動すべてを支配すること。
第3は、本人の重要な個人的な情報が思い出せず、これがふつうの物忘れでは説明できないほど強いこと、となっています。
ただ、このような状態はお酒を飲んだ時にも見られますが、アルコールや薬によるものでなく、また「てんかん」という病気ではないと判断されたときに、「解離性同一性障害」の診断に至ります。
患者の多くは10代から20歳代の若い女性で、この障害の背景には、幼児期からそれ以降に受けた身体的な暴力や虐待、さらに性的な虐待などの心的外傷の体験が多くみられます。
治療は、人格障害の治療や精神療法に熟達した精神科医や臨床心理士が当るべきなので、大学病院精神科をはじめとする専門施設・地域の精神保健福祉センターへ相談することをおすすめします。